父の遺言書には実家は姉に、預貯金はすべて私に

3.姉が相続した不動産と私がもらった預貯金の格差が不公平!

Q 2人姉妹の妹です。優秀な姉と比べられながら両親に育てられたので、幼少期のいい思い出はあまりありません。母はこれといった財産を残すことなく数年前に亡くなり、父も3カ月前に他界しました。父の遺言書には「(評価額9000万円の)実家は姉に、預貯金(死亡時の総額1000万円)はすべて私に相続させる」と記載されており、それ以外の財産はなく、他の相続人はいません。私は実家に戻って生活するつもりはありませんが、あまりに不公平ではないでしょうか。ちなみに、姉の夫の弟が数日前にその実家に引っ越したようです。

A 現金で遺留分を請求できます。

妹であるあなたの遺留分は合計2500万円であり、あと1500万円は確実に確保したい状況です。

以前であれば、「遺留分減殺請求権」の制度で、物件9000万円のうち4分の1を所有する権利が妹にありました。しかしこれでは共有状態が生じるため、不動産の場合、姉の夫の弟といった実家にあまり縁がない人物が住み始めると紛争の激化は避けられませんでした。

19年7月以降の相続では、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを求める権利へと改正され、不動産利用に関する紛争は避けられるようになりました。つまり質問者である妹は姉に1500万円を金銭で請求できるのです。

4.最後の妻に自宅を渡したいのですが、先妻の子が……

Q 私は3回結婚して、1回目と2回目の結婚で、それぞれの妻との間に子どもを授かりました。今の妻と結婚して25年経過しましたが、子どもはいません。先妻の子どもたちと妻はとても仲が悪く、そのことで常に頭を抱えています。私の死後、妻は2人の子どもを相手に相続争いする可能性が高いと考えております。私としては、現在所有する自宅は妻に確実に渡したいと思っております。どうしたらよいでしょうか。

A 結婚20年以上なら、自宅贈与も検討できます。

生前贈与は今回の民法改正前から広く行われており、贈与税を気にせず、かつ妻と今後も仲良くしていける自信がある場合には、この手段がすぐに実行できます。しかし贈与税は恐ろしい存在であり、たとえば総額5000万円程度の財産が移動するとき、相続なら無税ないし、高くても200万円程度の相続税で済むものが、何の対策もない贈与では贈与税が2000万円を超える可能性があります。

そこで、こうしたケースでは「婚姻期間20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与」を2000万円まで非課税にする制度を利用するのがおトクでした。