路上駐車をしているトラックの運転席では、多くのドライバーがハンドルに足を上げて休んでいる。元トラックドライバーのライター橋本愛喜氏は「時間調整も大きな仕事で、サボっているわけではない。行儀が悪くみえますが、不規則な休憩時間内に狭い車内で体を休めるには最適なのです」という――。
※本稿は、橋本愛喜『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
路上駐車で休憩せざるを得ないトラック運転手の事情
2006年、集荷や集配のための一時的な路上駐車であっても、即刻駐車違反となる「改正道路交通法」が施行され、各宅配業者は対応に追われた。
それでも朝の通勤ラッシュ時には、道路を塞ぐようにして停まっているトラックや、時には長い列を成し、ハンドルに足を上げて寝そべるドライバーたちの姿を目撃することがある。
こうしたトラックは、一般車からすれば邪魔でしかなく、「よりによってなんでこんなところでサボってるんだ」とイライラしたことがある人も少なくないはずだ。
しかし、彼らは決してサボっているわけではない。結論から言うと、彼らがしているのは「時間調整」。トラックドライバーにとって、現状「待つ」という作業も一つの大きな仕事となっているのだ。その事情を説明していこう。
「延着」は事故の次に犯してはならない失態
トラックドライバーの仕事は「トラックの運転」だけではない。彼らには「荷物を安全・無傷・定時に届ける」という責務もあり、存在意義からすると、むしろ後者のほうこそ彼らの本職だといえる。
それゆえ、遅れて現場に到着する、いわゆる「延着」は、彼らがトラックドライバーとして仕事をするうえで「事故」の次に犯してはならない失態で、最も恥ずべき行為の一つだ。場合によっては「荷崩れ」と同じように、高額な損害賠償の対象にさえなる。
道路状況は天候や事故の有無などにも左右されるが、雪が降ろうが台風が来ようが彼らには関係ない。渋滞や交通規制をかいくぐり、時には仲間と情報共有しながら延着せぬように道路をひた走る。こうして到着した現場周辺で、約束の搬入時間まで「休憩」という名の時間調整を行うのだ。