日本の就業者数は先進国の中でもかなり高い
先進7カ国で唯一、日本と同レベルとなっているのがイタリアですが、どういうわけかイタリアは日本から見るとかなり豊かに見えます。
1人あたりのGDPが日本の1.6倍もあり、大卒の初任給が50万円を超えることも珍しくない米国や、社会保障が充実しているドイツやフランスが豊かであるのは当然だとしても、数字がよくないイタリアが、なぜ日本よりも状態がよく見えるのでしょうか。
もちろんイタリアにも失業や貧困など様々な問題があり、欧州の中では問題児とされていますが、それでも日本より事態が深刻であるとは思えません。実際、イタリアの相対的貧困率は13.7%と日本よりも低い状況です。
イタリアの状況がそれほど悪くないのは、企業の生産性が高く、社会全体として効率よく稼ぎ出す仕組みが出来上がっているからです。
イタリアの1人あたりGDPは日本よりも低い状況ですが、1人あたりのGDPというのはGDPを総人口で割った数字なので、稼ぎを得るために働いている人の数は関係しません。
日本は1億2700万人の人口に対して、仕事をしている人は6400万人を超えています。総人口に対する就業者の割合は50%を超えており、これは先進国としてはかなり高い数字です。
イタリアは5人に3人が無職なのに豊か
子どもや高齢者、病気を抱えている人は労働していないという現実を考えると、日本の場合、働ける人はほぼすべて働きに出た状況といってよいでしょう(こうした数字からも、専業主婦という存在はもはや幻想にすぎないことが分かります)。
しかしながらイタリアの場合、5900万人の人口に対して働いている人はわずか2300万人であり、就業者の割合は40%以下となっています。
要するにイタリアでは、5人に2人以下しか働いていないわけですが、このわずかな労働者の数で、日本に近い富を稼ぎ出していますから、仕事をしている人の生産性は極めて高いということになります。
実際、イタリアの労働生産性は日本と比較すると高い数字です。
日本生産性本部の調査によると、1人あたりの労働生産は、日本が8万3000ドルだったのに対して、イタリアは10万3000ドルでした(どちらも購買力平価ベース)。少ない人数で効率よく働き、残りの人は仕事をしないで生活するというのがイタリア流ということになるでしょう。
イタリアは若年層の失業率が高いことでも知られていますが、国全体として日本に近い稼ぎを得られているのであれば、無理に労働する必要はなく、これが失業を長期化させている面もあると思います。