浪費家の父が突然、節約に目覚めたきっかけとは

助け舟、それは息子の実さんと奥さんでした。2人は隆さんの生活の立て直しに協力的で「家計に負担にならない程度に、食事の差し入れをする」と提案してくれました。その他、スマホを格安スマホに変えるサポートをするなど、細かな手続きをしてくれました。

また、実さんは2歳下の妹さん(独立・既婚)ととともに隆さんの買い物に可能な限り同行し、日用品や洋服などの衝動買いを抑える声掛けもしてくれることとなりました。

これらを実行し始めた頃、隆さんが突然、支出削減に前向きになりました。

実は、高齢の「遊び仲間」が長期入院したので見舞いに行くと、これからお金がかなりかかることを実感したというのです。もし、自分も病気やケガをしたら、入院・治療費に加え、退院後もヘルパーさんを頼んだりと外部のサポートを受けたりする必要があり、そのすべてに出費が伴う。介護保険が使えるかもしれないが負担は思いのほか大きい。「遊びまわっている場合ではないのではないか」と危機感を覚えたそうです。

自覚も芽生え、徐々に支出削減は実行されていきました。さらに、思わぬ相乗効果が出てきました。娘や息子、嫁、孫たちが自分の家に出入りする機会が増え、にぎやかになってきたと感じた隆さんは、外食や外出が減ったのです。

月の支出が12万5000円も減らすことに成功できた理由

外での仲間との活動を一切なくしたわけではありませんが、自宅で楽しむ、近所の公園で楽しむといった、お金のかからない時間の過ごし方が増えたのです。そうすると、交通費や交際費も減り、最終的に月に計12万5000円も支出を削減できるようになりました。

夕食に納豆を食べる年配男性
写真=iStock.com/byryo
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毎月6万円(年間72万円)の赤字だったものが、完全に逆転して、毎月6万円(年間72万円)の黒字になったのです。72歳以降は会長報酬がなくなり、収入は年金のみとなりますが、こうした支出傾向であれば、長生きリスクにも備えることができそうです。

老後は予測しえないことも起こりがちです。急にお金が必要な事態になることもあります。隆さんは非常にうまく改善できた一例ですが、簡単なことではありません。多くの人がうまく支出を減らせずに苦しんでいます。

年金という収入があっても、1カ月の生活費には足りないケースがほとんどです。老後を元気に、楽しく暮らしていくには「長生きリスク」を念頭に計画的に貯蓄を切り崩すことを計画することも必要なのです。