すべての映画がアカデミー賞の対象ではない
もうちょっと詳しく、アカデミー賞の仕組みについてお話ししましょう。まず、アカデミー賞の対象となる作品の資格について。実は、世の中に存在するすべての映画作品がアカデミー賞の対象作というわけではありません。
長編映画の場合、対象となるのは「前年の1月1日から12月31日の間に公開が始まり、ロサンゼルス郡内の商業映画館で、1週間以上連続して有料上映された、40分以上の35ミリか70ミリ、あるいは指定のデジタルフォーマットの作品」かつ、「劇場公開前にTV放送、ネット配信、DVD等が発売されているものは対象外」です。
このことは「定額制の有料動画配信サービスであるNetflixで放映されたオリジナル作品をどう扱うのか?」という議論にも関わってきます。長編アニメーションの場合、これに加えて「主要なキャラクターがアニメーションである」「上映時間の75パーセント以上がアニメである」ことも条件です。長編実写映画のなかにちょっとだけアニメのシーンが入っていても、それはアニメではないということですね。
部門ごとのノミネート→決選投票
次に、選考方法です。アカデミー賞は、部門ごとにノミネート(候補)作品がまず決まり、それらを決選投票することで受賞作が決まります。たとえば、第91回の作品賞ノミネートは以下の8作品でした。
『グリーンブック』
『ブラックパンサー』
『ブラック・クランズマン』
『ボヘミアン・ラプソディ』
『女王陛下のお気に入り』
『ROMA/ローマ』
『アリー/スター誕生』
『バイス』
「どの作品をノミネート作品として選出するか」を決めるための投票をするのもアカデミー協会員ですが、全会員が全部門のノミネート作を決めるわけではありません。
俳優部門の賞(主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞)は、俳優部門の会員(=俳優)が投票します。同じように脚本賞は脚本家が、美術部門は美術スタッフと、それぞれの専門家が同業者の専門家に対して投票します。ただし作品賞だけは別。全協会員の投票によってノミネート作を決定します。
また、国際長編映画賞(旧・外国語映画賞)や長編ドキュメンタリー映画賞、歌曲賞などの場合、ノミネート作に選ばれる前段階として「ショートリスト」と呼ばれるリストに入る必要があります。多くの作品の中から一度少数に絞るプレ選考のようなものです。