トヨタ自動車の元会長、奥田碩さん、セブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文さん、京セラ創業者の稲盛さん……彼らの共通項は何か? みな、大不況期に社会人となった。つまり、就活氷河期世代の先駆けである。

そしてもう一つ。就職した当時はどの会社も、無名企業だった。トヨタも1950年代はこれからの企業であり、当時の学生人気は、3白(砂糖・紙・パルプ)、石炭、造船だった。

不況期就職はどんな「よさ」があるのか。

まず、不況でも採用を続ける企業は、相当の実力がある企業といえる。好況期だと、どの企業も採用を増やすから、本当に実力のある企業がどこか、よく見えない。

図表は、不況期に活発に採用した企業名を挙げたものだ。どうだろう。不況期に、その当時はまだ無名だが、実力のある企業が採用を行い、その後、グンと業績を伸ばして、みな大企業・有名企業となっていることがわかるだろう。

採用側に視点を移すと、また別の話ができる。好況期は大手や人気企業が大量採用をする。実力があっても無名の企業には応募者が集まらない。そこで、そういった企業は、実力の割に人材が獲得できないことが多い。それが、不況になるとようやく人材確保ができるようになる。とすると、不況でそれらの企業に入社すると、自分より上の世代は、人材層がとても薄い、ということになる。だから、入社後、先輩を追い抜き一気に出世できる。そのため、不景気に実力ある無名企業に入った人材から、名経営者が生まれる。

もう、不況だから「大手・有名企業に入れない」と嘆く必要がないことがわかっただろう。不況だからこそ、「明日の大企業」を見つけられる可能性が高い、と前向きに考えてみよう。

※この連載では、プレジデント社の新刊『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(3月15日発売)から一部を抜粋して<全5回>でお届けします。

(澁谷高晴=撮影)