香港デモも悪影響、大幅な減収減益は避けられない
文政権の主な支持基盤の一つである市民団体などは、わが国への抗議活動を展開した。ユニクロはその標的にされ、店舗から一気に客足が遠のいた。回答者の80%近くが対日不買運動に参加していると回答した世論調査もあるほど、不買運動が盛り上がった時期もあった。日韓関係の悪化が韓国の消費者心理に与えた影響は軽視できない。
ファーストリテイリングは韓国事業の減速を想定し、店舗の在庫圧縮などを進めたとみられる。それでも、不買運動の影響を回避することは難しかった。昨年9~11月期、ユニクロの既存店売上高は急減し、韓国事業は営業赤字に陥った。韓国事業の大幅な収益悪化などを受け、海外事業全体の売上総利益率が低下するなど、ファーストリテイリングにとって日韓関係悪化のインパクトは大きい。
今年1月の決算説明会において、ファーストリテイリングは、韓国では昨年7月の売り上げ動向が継続しており、通期でも大幅な減収減益は避けられないと先行きを厳しく見ている。この影響は大きく、同社は2020年8月期の通期業績予想も下方修正した。まさに同社は日韓関係の悪化とさらなる冷え込みに直撃してしまったといえる。加えて、香港で反政府デモが長期化していることや各国での暖冬なども、同社の収益とその見通しが悪化した要因となっている。
この強硬姿勢に韓国社会は耐えられるか
当面、ファーストリテイリングの韓国事業は、厳しい状況に直面し続ける可能性がある。昨年の夏場に比べると不買運動の激しさは幾分かトーンダウンしているが、日韓の対話は実質的に進展していないとみられる。先行きは楽観できない。
文政権は、南北の統一と反日を掲げ、何とかして4月の総選挙を乗り切りたい。そのため、一朝一夕に、日韓関係が修復に向かう展開は想定しづらい。足許、韓国の経済は文大統領の経済運営の失敗などの影響から、若年層の失業率が高止まりするなど不安定感が増している。同時に、北朝鮮は文大統領の呼びかけに聞く耳を持とうとしない。文氏が反日姿勢を強調し、支持をつなぎとめようとする可能性は軽視できない。
問題は、文氏の姿勢に、韓国の社会全体が耐えられるか否かだ。韓国の経済界や保守派の政治家を中心に、わが国との関係が冷え込み続け、経済運営に無視できない影響が出るとの危機感は増している。また、文大統領を支持してきた層の中にも、労働争議の激化などから企業の経営が悪化し、さらに雇用環境が悪化することなどへの不安が出つつあるようだ。安全保障面の連携強化などに関して、文政権と米国との関係も冷え込みつつある。