民主党政権時代の「前例」を持ち出す責任逃れ

「二重三重のルール無視が、5年も続いていたことに驚く。その理由について、菅氏は先週、『事務的な記載漏れ』と述べていたが、きのうになって、民主党政権時代の11、12年度の取り扱いが『前例』となり、『漫然と13年度以降も引き継がれてきた』と説明した。会自体が中止となった11、12年度の処理を『前例』にしたというのか。にわかには納得できない」

納得できないどころか、かつての民主党政権を持ち出すのは責任逃れである。漫然と引き継いできたのは自民党ではないか。朝日社説は書く。

「名簿の保存期間は18年度から、管理簿への記載義務がない1年未満に変更され、会の終了後、直ちに廃棄されるようになった。翌年の準備のために保管しておいてしかるべきものを、大量の個人情報を持ち続けるリスクを避けたという政府の言い分をうのみにはできない」

通常なら次の年のために保存されるはずだ。なぜ直ちに廃棄されるようになったのか。招待者名簿が公になると、問題になるからではないのか。この点に関し、朝日社説はこう推測する。

実態を公にしたくないという思惑があったのではないか

「この会の招待者は、第2次安倍政権発足以降、年々膨らみ続け、首相の後援会関係者や妻の昭恵氏が推薦した知人らが大勢含まれていた。こうした実態を公にしたくないという思惑が、公文書管理のあり方に影響してはいなかったか」

朝日社説の推測の通りだと思うが、さらに言えば、世間一般の目から見て好ましくない人物が名簿に多くあるのだと、沙鴎一歩は考えている。事実、招待者名簿の安倍首相の推薦枠にオーナー商法で行政指導を受けたジャパンライフの元会長の名前があった可能性が指摘され、安倍首相が国会で追及された。

朝日社説は主張する。

「この政権下では、森友問題での財務省の公文書改ざんや自衛隊の日報隠しなど、国民の『知る権利』に背く不祥事が後を絶たない。公務員のルール逸脱をこれ以上、繰り返さぬために、安倍首相や菅氏は先頭にたって、政府全体の公文書管理を検証し、実効性のある再発防止策を講じる必要がある」

思い起こせば、朝日新聞がスクープした「財務省の公文書改竄」や国会で散々追及された「自衛隊の日報隠し」も安倍首相に対する過度の忖度そんたくが生んだ負の落とし子なのである。

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