マンション在庫はすでに限界値
この10年あまり、わずかな成長率ではありましたが、「いざなぎ景気」を超える長期にわたっての好況が続いてきました。これは、小泉政権の時代に低金利政策が打ち出され、住宅金融公庫(現:独立行政法人住宅金融支援機構)の「フラット35」や親子二世代ローンなどによって、住宅取得を促してきたことが要因の一つと考えられます。
首都圏の住宅数は、流入人口や世帯分割も含め、多くても年間5万戸程度の増加です。しかしこの間、その2倍近い年間8万~10万戸の供給があったにもかかわらず、住宅の売れゆきは好調でした。その理由は、古い住宅の売却損を給与所得から差し引いて所得税や住民税を支払えるという買い替え特例の税制導入も加わって、住宅購入を後押ししていたからです。
しかし、ここにきて在庫が臨界点に達し、住宅建設は止まっています。
毎年7万~8万戸という供給ペースは異常な状態です。市場にはマンションの完成在庫があふれています。夜、タワーマンションの前を通ると、明かりのついていない部屋の多さに驚きます。こういった在庫はいずれマーケットで処分されます。また、昨今、中小マンションデベロッパーの破綻が相次いでいますが、大量の在庫がマーケットに放出され、そこで売買されるでしょう。
それだけではありません。マーケットの急落を受け、仕入れや建築確認の取得まで済んでいる案件が未着工のまま止まっているケースも多くみられます。
不動産の価格は、需要と供給のバランスで決まります。場所にもよりますが、在庫調整が終わるまでは不動産の値下がりが続いていくでしょう。