4週間の育休取得は、父親の復帰後の収入を2%下げる

その後ノルウェーでは、06年の時点で男性の育休取得率が7割に達し、その後も緩やかに増え続けています。同国の経済学者たちの詳細な研究によると、大きかったのは「身近な人」の影響でした。同僚や実の兄弟に育休を取った勇気ある父親がいた場合、育休取得率は11~15ポイントもアップ。さらに、会社の上司が育休を取った場合の影響は、同僚同士の場合より2.5倍も強いことが判明しました。こうした勇気が伝染していき、取得率が上昇していったのです。

自分を評価する上司が率先して育休を取ることは、自分自身が育休を取ったときも不利に扱われることがないという安心感につながるに違いありません。日本政府は、男性の育休取得率を20年に13%まで高めるという目標を掲げています。小泉進次郎環境相が育休の取得を検討している話が賛否両論を呼んでいますが、男性の育児休業取得率向上の観点からは、大臣の立場にあるような方に率先して取得してほしいと思います。

復帰後の収入やキャリアへの影響についても、さまざまな研究が行われています。ノルウェーの調査では、4週間の育休取得は父親の復帰後の収入を2%下げるという結果が出ています。さらにこの影響は、子供が5歳になった時点でも継続しているとのことです。

このデータを「育休によってキャリアに影響が出た」と見なすべきかどうか。この論文を書いた研究者らは、むしろ父親が自分自身の選択によってライフスタイルを変え、残業をしてより多く給与を稼ぐより、家庭で過ごす時間を増やした結果ではないかと推測しています。実際、カナダの研究では育休の結果、父親の家事時間や子育て時間が増えたことが報告されています。

育休期間は長ければ長いほどよいのか

父親の育児休暇取得は、子供の発達にも好ましい影響を与えると考えられています。たとえばスウェーデンでは、16歳の時点で偏差値1に相当する学力向上効果が見られたそうです。

どのようなメカニズムでそうなるのかはまだ研究中ですが、子供が成長してからも父親と良好な関係が継続したり、父親がライフスタイルを変えた結果、子供の勉強を見る時間が増えたりしているのかもしれません。

また、育休期間は長ければ長いほどよいのかといえば、そうとも限らないようです。育休期間を1年間から3年間に延長したドイツでは、子供の発達に大きな変化は見られませんでした。フランスでは、むしろ育休を3年にすると子供が家族以外の大人と話す機会が大幅に減り、言語発達にマイナスの影響が出るという報告もあります。

夫婦合計で3年間、といった設定にすると多くの場合母親の休業が長期化し、男女の役割が固定しがちになるという影響もあるようです。