どんな謝罪会見が望ましいのか

これを受けて吉本興業は闇営業を仲介したカラテカの入江慎也氏との契約を解消した。その後、ギャラはもらっていないと説明していた芸人たちが、金銭(宮迫博之氏の100万円、田村亮氏の50万円など)を受け取っていたことが発覚、さらには別の反社会勢力のパーティーに出席した芸人もいることが報じられた。

写真=時事通信フォト
見事なメディア操作/飯島氏は、「反社会勢力との関係が明確になった問題芸人2人が、記者会見を経て、世間の風向きを変えた」と指摘。反対に吉本興業は防戦一方に。記者会見の恐ろしさを物語る。

最初の問題に対応し切れないうちに、次々と新たな問題が浮上する中、7月20日になって、前日に契約解消処分を受けた宮迫氏・田村氏の2人が記者会見を開いて、涙ながらにこの間の吉本興業側とのやりとりを暴露、批判の対象が芸人から会社へと拡大する。2日後の22日、岡本昭彦社長が初めて記者会見を開き、2人への処分撤回などを発表したが、5時間半にも及ぶ会見に、世間の吉本興業への批判がさらに高まる結果となり、今日に至っている。

では、不祥事の当事者としてはどんな謝罪会見が望ましいのか。官僚も不祥事が起きると大々的に報じられる職業だが、彼らは個人で何かを釈明することはない。マスコミから追及されても、事実確認には応じるが、ああだこうだと言い訳することは許されない。組織を守るためには我慢するしかないことを理解している。不祥事の内容によって懲戒、訓戒、口頭注意などの処分が決まれば、粛々と受けるだけである。

役所側もどんな質問を受けようが「これからは一切しません。二度と同じことが起こらないようにします」で押し通す。それしか言いようがないからだ。また、同じ回答を繰り返せば、会見を早く切り上げることができる。2時間半とか5時間半とか、ばかげた長さにはならない。不祥事を起こした組織が謝罪会見で語るべきなのは、その不祥事の正確な事実関係と、二度と問題を起こさないための具体的な改善策だ。

それらを淡々と説明し、同じ言葉を繰り返すことは、普段会見などしない人でもできるだろう。

会見場所も、吉本興業は、公的な事業も担っていたということだったから、その当該官庁(例えば、国土交通省、大阪府など)に一連の諸問題の報告をしたあとに、その官庁でそのまま記者会見を執り行えばよかった。そうすれば、当然のことながら官庁のルールに従って、記者会見には人数制限、時間制限が発生し、エンドレスに辛い質問を受けることなく、かといってメディアから逃げているという批判も受けずに、済んだ。これが大人の知恵というものだ。

芸人は、世間の空気を読むのに長けているもの。問題芸人2人は、非常にうまくメディアをコントロールして、吉本興業が自然に悪者になるようにうまく記者会見を進めていた。「事実を明らかにしただけだ」と本人たちは否定するだろうが、あの記者会見の結果、本人たちが復帰したいと望んでいるはずの吉本興業の印象だけが悪くなった。