景気後退の色合いが濃くなって財布の紐が一層固くなるなか、秋の旅行シーズンを迎えた。「安い・近い・短い」が合言葉になり、スポットライトを浴びているのが東京都内の観光だ。たとえば、今年で60周年を迎えたはとバスは7月から特別企画のツアーを運行、「あの時この町東京紀行」とか「江戸味覚食い倒れツアー」が人気を集めている。これらは日帰りで、料金もそれぞれ6660円、9980円と割安に設定され、予約段階でほぼ満席状態となっている。
その理由を、運営に携わる定期観光部の石川祐成次長は「東京は進化する街でありながら、江戸文化も残している。そこで、60周年ならではと銘打ち、プレミアム、リバイバル、お得値をキーワードに、従来とは違った見せ方、楽しみ方を工夫した。結果的に、新しい顧客の開拓につながった」と話す。
はとバスはいま、東京と近県を中心におよそ140コースを定期的に運行し、その利用者数はここ数年の50万人台半ばから60万人台半ばへと、着実に伸びてきた。意外なのは、利用者の半数が首都圏に住む人たちだということ。手軽な観光ニーズの高まりとともに、同社も一段の飛躍をとげそうだ。
また、そもそも東京は観光スポットとしての価値が高く、それに対する注目度もここにきて増している。都が7月に発表した最新の観光客数調査でも、昨年、都内を訪れた旅行者は約4.4億人、前年比2.8%増である。このうち外国人は533万人余りで、10.9%と2桁の伸びを示している。もちろん、これもはとバスにとって追い風だ。
(ライヴ・アート=図版作成)