パナソニックはメーカーから「ソフトウエア企業」へ
次に家電メーカーの雄、パナソニックだ。2018年に創業100年を迎え、まさにこのデジタルシフトの時代に合わせて、メーカーからいわばソフトウエア企業へ脱却しようと試みている。
日本経済新聞電子版の2019年2月10日付記事「モノ作らぬメーカーに」に、それを示す内容が載っている。ここでは発言の一部を引用しながら解説を加えよう。8代目社長・津賀一宏氏へのインタビュー記事である。
「あれは何年前だろう。(2012年に)社長になる前、米国の店に行ったら消費者がうちのプラズマテレビとティッシュとバナナを同じワゴンに入れて買っていた。『テレビが安いからプールサイドかガレージで使うんや』と。開発者はホームシアターとしてリビングで使ってもらおうと高画質にしているのに」
「アホらしくてやってられるか、と思った。日本メーカーがなぜ世界を席巻する商品を出せていないか。答えは単純だ。日本のお客様の声を聞いてきたから。中韓メーカーの台頭や円高などいろいろある。だがそれ以上に大きいのは、日本の厳しい消費者に受け入れられる製品はグローバルでいい商品だ、という認識だったと私は思う」
「機能が優れ装備がリッチであればいいという高級・高機能を追求する『アップグレード型』はもうやめる。暮らしの中で顧客がこうあってほしいと望むことを、製品に組み込んだソフトの更新で順番にかなえるような『アップデート型』に変えていく」
(中略)
「完成品を顧客に渡すのは一見素晴らしいが、すぐにコモディティー化する。私たちがソフト企業になるかソフト企業と手を組まないとイノベーションは起こせない」
パナソニックもGAFAを意識している
インタビューではGAFAについても触れられている。津賀社長は「今後、GAFAだけ伸びるのか。私はそうは思わない」と前置きしたうえで、GAFAはメーカーが主導する工業製品の進化という成果の上に乗っており、我々の進化が止まればGAFAの進化も止まる、と述べている。
ただその一方で「彼らは高級・高機能化ではない方向で価値を生んでいるのも事実。だから我々もアップデート型にシフトする」と語っていることも興味深い。つまり、相当にGAFAを意識しているわけだ。
日本を代表するメーカーであるパナソニックも、デジタル産業革命時代にビジネスモデルの根幹から大きく変えねば生き残れないと考えているのである。