電気自動車の普及でエンジンが不要になる

まず1つ目は「電気自動車」の普及である。将来世界でも7000万台もの電気自動車が普及する可能性が示唆されている。中国深圳のタクシーがあっという間にほぼすべて電気自動車になってしまったという事例からも、電気自動車の普及はかなり現実味があると見て良いだろう。

電気自動車になると、トヨタグループの強みの一つであるエンジンが搭載されない。某有名IT企業経営者が「電気自動車時代になれば、クルマはゴーカートのようなもの」と言ったが、実際に新興自動車メーカーである米テスラや、中国でもBYDをはじめ、続々と新興自動車メーカーが登場してきている。部品点数は従来車の何分の1にもなるし、トヨタが誇った技術や部品メーカーとのピラミッド型組織構造が電気自動車の世界では何の強みにもならない可能性もある。

私自身も「かいより始めよ」の言葉通り、体験を兼ねてテスラに乗っているが、非常に素晴らしく快適なドライブが実現されている。テスラの場合、ソフトが都度アップデートされるので、常に最新機能が備わるためだ。従来の自動車は買った時点が最新鋭で、ソフトによりアップデートされることはない。テスラは、まだ現時点では充電の不便などがあるが、将来その点が解消されれば、ガソリンよりも自然に優しく、燃費も格段に安い電気自動車は確実に普及するだろうと実感する。

自動運転とライドシェアの普及もトヨタの脅威に

2つ目が「自動運転」である。自動運転が次世代自動車の中核と言っても良いほど巨大な市場になるが、ここでもグーグル、アマゾン、アップルといったGAFAが存在感を強めている。グーグルが特に先行しているが、アマゾンも正式に参入表明をしており、アップルでは水面下で「iCar」の開発が進行しているとうわさされている。世界の自動車メーカーは相次いで自動運転分野で先行するIT企業と提携を発表しており、自動運転では既存自動車メーカーがトップランナーではないことを物語っている。

そして3つ目が「ライドシェア」と呼ばれる配車サービスやカーシェアリングサービスである。今後社会はシェアの時代にどんどん突入していく。「所有から共有」である。この領域の世界的プレイヤーと言えば、米ウーバー・テクノロジーズや米リフト、中国ディディなどである。日本では規制によりこのような配車サービスは普及していないが、海外ではもはや社会インフラとして欠かせないものになっている。配車サービスやカーシェアを使えば、自家用車を持つ必要性はますます低くなっていくだろう。

つまり、次世代の電気自動車、自動運転、ライドシェアといった大きなトレンドにおいては、トヨタの競合として大きな壁となり立ちはだかる会社は従来の自動車メーカーではなく、GAFAを中心としたIT企業なのである。日本を代表するトヨタであったとしても、将来は安泰ではない。デジタルの大波に、ビジネスモデルから大きく変貌させねば生き残りすら危うい状態になっている。豊田社長はそれに気付いているからこそ、危機感を盛んに表明しているのである。