人口減に加えて、テクノロジーの進化もあって「需要<供給」になり、数が減ってきているのはガソリンスタンドです。低燃費化やハイブリッド車、電気自動車の登場でガソリンスタンドの数は右肩下がりです。資源エネルギー庁の発表を見ると、1989年と比べて2016年のガソリンスタンドの数は46%も減っているのです。

人口減が将来どのようにモノの価値に影響するかを考えることは、特に日本において資産形成をする上では非常に大切な要素です。常日ごろ、将来の需給バランスを意識するようにしましょう。モノの価値を見る目を鍛えられる上に、長期的な目線で物事を考える習慣も身につくことでしょう。

発売から35年、一度も値下がりしない「バーキン」

移り変わりの激しいファッション業界で、常に「需要>供給」の構図を維持し続けているアイテムがあります。ファッションにあまり興味がない人でも聞いたことがあるはずのアイテム、エルメスのバーキンです。

私の友達のフライトアテンダント曰く、「2000年代始めのユーロが導入された頃は、バーキンは30万円で買えたのよ」とのこと。エルメスのバーキンといえば、今では200万円はしますし、新品を購入するのは至難の技です。彼女の言っていることをもとに計算すると、2003年から2018年の15年ほどの間に、バーキンの価格は30万円から200万円と年平均成長率13.5%で上昇したということになります。

このデータを裏付ける調査データもありました。インターネットで高級バッグを再販するバッグハンター(Baghunter)の調査によると、バーキンの価格は、1984年の発売当初から一度も下落することなく、毎年その価値が14.2%上昇しているとのことです。

バッグハンターによると、バーキンがこれだけの価格上昇を実現できている理由を、エルメスの「特別な顧客にだけ販売する」という方針により、需要に対する供給不足を実現しただけでなく、「バーキンを持つ」という新しいステータスを提供することに成功した結果、と説明しています。

親子2代で使えるのならもはや“資産”

ブランディングの成功だけでなく、私がすごいと思うのが、バーキンはデザインが発売当初からあまり変わっていないということです。流行の浮き沈みの激しいこの業界において、同じデザインで30年以上たっても世界的に供給不足の状態にある商品は稀です。

ですから、デザインが安定していて、希少価値があり、根強い需要も世界的にあり、結果として価格が上がり続けているバーキンは、消耗品になりがちなバッグでありながらも資産として認識してもよいのではと思うのです。