トランプ大統領が放った「不公平発言」

G20サミット首脳会議出席のために来日したドナルド・トランプ米大統領は、会議終了後の記者会見において、日本が米国の防衛義務を負わない現行の安保条約は「不公平(アンフェア)」だと発言した。

大統領は、自分は安倍晋三首相にこれを変える必要があると伝えているとも述べた。また大統領は、安倍首相は米国が攻撃されたときに、日本が米国を助ける必要があることはわかっているし、そうすることが問題だとは考えないだろうと付け加えている。

20カ国・地域首脳会議(G20サミット)閉幕後に記者会見するアメリカのドナルド・トランプ大統領=6月29日、大阪市内(写真=時事通信フォト)

衝撃的な発言である。だがトランプ大統領の真意はよくわからない。すぐに何かを要求するのではなさそうで、いわんや安保条約を廃棄したいというわけでもないようである。大統領自身、会見でそれをはっきり否定しているし、米国の基本的な国益と現在の国際情勢から見ても、それは考えにくい。

「公平(フェア)」な条約のため試案を準備すべき

そのため、進行中の日米貿易交渉を有利に進めるための牽制であるとか、同盟負担の分担問題でNATO諸国ばかりを標的にするのは「不公平」だからバランスをとったのではとか、いろいろ臆測がなされている。

だがそういった臆測はともかく、仮にも米国の大統領が、日米両国の安全保障協力の基本を定める日米安全保障条約は「不公平」だ、と発言した事実は重く受け止めねばならないだろう。偽善がなく、本音をストレートにいってしまうことが多いトランプ大統領だけに、今後も同様の発言が繰り返される可能性は低くない。真剣に対応する必要があると思う。

とくに、いまの安保条約をトランプ大統領から見て「公平(フェア)」な条約に、仮に改定(再改定)するとしたら、どういうものが考えられるか。試案を準備しておく必要があるのではなかろうか。

むろん、実際に安保条約を改定するとなれば、大変な政治的作業になる。あくまで慎重に考えるべき事案であることは言うまでもない。しかし実際に改定が必要になってから、慌てて考えはじめるというのでは、大変なものがさらに大変になるだけである。