値上げを受け入れる「ゆとり」はなくなりつつある
第4弾の制裁関税が引き上げられれば、アップルのように中国で完成品を生産し、米国に輸出する企業は関税を負担しなければならなくなるだろう。販売価格が変わらないままなら、利益が落ち込む。自助努力で関税引き上げの影響に対応し、収益性を維持していくことは困難だ。最終的に、企業はコストの増加分を、販売価格に転嫁する可能性が高い。
これはアップルにとって非常に深刻な問題だ。すでに米中の通商摩擦は、世界各国で消費者のマインドを悪化させている。米国でも中国でも、小売業の売上高は鈍化している。世界的に企業業績も右肩下がりだ。先行きへの不透明感が高まる中、世界各国の消費者にとって、値上げを受け入れるだけの心理的・経済的なゆとりはなくなりつつある。
アップルはスマートフォン市場の競争を考えると、むしろ製品の価格競争力を強化したいところだろう。自社製品の価格帯を広げ、激しい価格競争に対応するためだ。
もはや「中古のiPhoneでよい」という人も多い
スマートフォンのボリュームゾーンである新興国の市場では、ファーウェイやオッポなど、“中華スマホ”が急速にシェアを伸ばしている。中華スマホは価格が低い。その上、機能面では遜色ない。安く、機能もよい製品が売れるのは当然だ。出荷台数の伸びが見込める新興国市場で中国勢がシェアを伸ばす反面、高機能・高価格帯のiPhoneは世界的にシェアを落としている。
この状況に対応するため、アップルは中国での値下げに踏み切った。アップルは価格を引き下げることで、販売台数を増やしたい。アップルはインドにおいてもiPhone XRの価格を25%引き下げた。インドではスマートフォンの価格が150ドル(1万6400円)程度だ。旧機種のiPhone 7ですら値下げ後の価格は449ドルである。依然、アップルの価格帯は高い。アップルは価格をさらに引き下げる必要性を痛感しているだろう。
先進国ではiPhoneのヒットが一巡している。わが国では、新機種の価格の高さ、目立った新しい機能が見当たらないことなどを理由に、既存機種を長期間使う、あるいは中古のiPhoneでよいという人も多い。