政治に対する要望として圧倒的に多かったのは「景気対策」(図3)。複数回答で7割弱が「景気対策」を挙げ、「財政再建」や「年金問題の早期解決」などを断然引き離している。
「選挙より景気対策優先」を掲げる麻生政権は民意を汲み取っているといえるが、問題は中身である。アンケートで「公共投資の増加」を望む声はそれほど高くない。従来型の景気対策の限界を国民も感じているのだろう。総額2兆円の定額給付金をばらまくのを景気対策の目玉にしているようでは、政権支持率が上がらないのも無理はない。
自動車産業は期待薄
では景気後退局面に入った日本経済を活性化するために伸ばすべき産業、技術は何か? この設問では意外な結果が出た。「農業」という回答が約33%で一番多いのである(図4)。
2番目に多かった「環境技術」についてはわかりやすい。今後CO2排出などの環境規制が世界的に強まることは目に見えているし、日本はすでに環境分野の技術先進国でもある。
なぜ「農業」なのか。前年に引き続いて多発した食品偽装問題や中国食品の問題で、食の安全性や39%という日本の食料自給率に国民の関心が向いたことは間違いない。
しかしこの設問が意図しているテーマは食の安全性でも、食料自給率でもない。経済活性化である。その手段として「農業」に注目が集まっているのだ。
これまで日本経済を牽引してきた基幹産業である「自動車」や「エレクトロニクス」に対する期待感はもはや高くない。国内市場は完全な頭打ちだし、頼みの綱の海外市場も今後は金融危機と景気後退の影響で売り上げが大きく落ち込むと予想されている。他国のライバルメーカーとの競争も激化する。
ということで、伸びしろがなくなった従来の輸出産業に将来性を感じられないのだろう。