読売や産経にスクープを与えて、他紙に追いかけさせる

そういえば、もうひとつ2年前と同じことがある。2年前は事前に読売新聞の単独インタビューに応じ「2020年施行」を語っている。その記事は5月3日、読売の1面を飾った。そして同じ内容をビデオメッセージで語ったため、読売以外の新聞の4日朝刊に、同じ内容の記事が載った。読売を他社が一斉に後追いする形となったのだ。

今年は5月3日の産経新聞1面トップに安倍氏のインタビューが載り、「首相『改憲の旗掲げている』与野党超え結集努力」という見出しが躍った。そして4日朝刊で各紙が「2020年改憲施行方針変わらず」などと報じた。

読売、産経など安倍氏に好意的な論調の新聞にスクープを与えて大々的に報じ、翌日にリベラルなメディアも含めて全社に追随させる。約6年半にわたって政権を維持するなかで培ったマスコミ操縦法なのだろう。

ただし改憲勢力「3分の2」維持は至難の業

いずれにしても、これで参院選は憲法改正問題が争点となる。自民党、公明党の与党が過半数を得て安倍政権が存続するかという問題よりも、与党に維新、希望の党などを加えた改憲勢力が、国会発議に必要な3分の2の議席を参院で維持できるかどうかが焦点となる。

今、改憲勢力は衆参両院で3分の2を維持している。しかし参院は自民党が圧勝した2013年の前々回当選組が改選を迎えるため、議席増は至難の業だ。定数の3分の2を維持するためには164以上の議席を改憲勢力が確保しなければならないが、3年前に当選した非改選議員は77人しかいないため、参院選では87人以上を積み上げなければならない。野党の共闘態勢が整っていないとはいえ、このハードルを越えるのは容易でない。

そこで「消費税増税の延期問題」だ。「消費増税凍結を発言させた安倍首相の狙い」で詳しく紹介しているように、安倍政権内では今年10月に迫った消費税率の10%への引き上げを延期する可能性を模索している。そして、延期を決断した場合、衆院を解散して国民に信を問うことも検討している。