あまりに大事な「遺伝子」を、私たちはよく知らない
私たちの体は「遺伝子」によって形作られています。皮膚や筋肉、心臓など人間のあらゆるパーツは遺伝子にある設計図を元に作られています。それだけ人間にとって大事な遺伝子なのに、私たちはその実態をよく知りません。
2017年9月から始まった『NHKスペシャルシリーズ人体』は、2018年3月に全8回のシリーズを終えました。その後視聴者からの反響をいただき、今回『シリーズ人体Ⅱ』として再出発することになり、司会の山中(伸弥)教授とも話し合った末に、すべての根幹である遺伝子を取り上げようということになりました。
1年間の制作期間を経て、遺伝子に関する膨大な取材を二回の放送にまとめています。1回目(2019年5月5日放送)は「トレジャーDNA」について、2回目(2019年5月12日放送)は「DNAスイッチ」。遺伝子研究の最前線を描いています。
見えてきた! コーヒー「体に良い・悪い」の理由
そもそもDNAと遺伝子は混同されがちですが、DNAの中で人体の設計図を持つものを遺伝子といいます。すべてのDNAのうち遺伝子は2%とごくわずかで、今まではこの遺伝子を中心に研究が進められてきました。のこりの98%のDNA(non-coding領域)は「何の働きもしないゴミだ」と、長年考えられていたのです。
ところが技術の進化によって、この98%のDNAには、遺伝子をコントロールする役割があり、健康や能力に関わる情報が眠る“宝の山”だということがわかってきました。これが1回目の放送で取り上げる“トレジャーDNA”です。
番組では、コーヒーの摂取が体に及ぼす影響から、トレジャーDNAを解説しています。
コーヒーに含まれる抗酸化物質には、血管を若返らせ、心臓を健康に保つ働きなどがあって、「体に良い」とされています。一方、カフェインには、健康に良い効果もあるのですが、血管を収縮させ血圧を上げる可能性も指摘されています。コーヒーを飲んで心臓に良い効果が得られる人は、このカフェインの作用を、どうやって帳消しにしているのか。それが、大きな疑問でした。