アップルCEOのティム・クックは「GAFA」と一括りに扱われることにいら立っている。他社のように個人情報を収益源にする企業ではないからだ。アップル出身で経営コンサルタントの竹内一正氏は「アップルの最新CMでは『プライバシーは大切』を全面に打ち出している。その姿は、まるで個人情報の守護神のようだ」という――。

温暖化対策で世界をリードするアップル

新機種が発表されれば、いやが応でも世界中の注目が集まるiPhone。しかし、アップルが進める地球温暖化対策にこそもっと注目が集まるべきだと不満をくすぶらせているのは、アップルのCEOティム・クックだけではないだろう。

アップルは地球温暖化対策で世界をリードしている。アップルが自社のデータセンターを100%再生可能エネルギーだけで稼働するようにしたのは、2014年のことだ。そして2018年4月には、直営店やオフィスなど全アップル関連施設の電力が、やはり100%再生可能エネルギーで賄われるようになった。

さらに、サプライヤーにも再生可能エネルギーでアップル製品を造るよう要請し、そのための資金提供も行っている。具体的には、2020年までに4GW(ギガワット)以上のクリーン電力をサプライヤーと共に生み出す計画で、これは2017年における同社の「カーボンフットプリント」の30%に相当する。

このように、新製品開発と並行して持続可能な社会の実現に力を入れているアップルだが、CEOティム・クックの挑戦はこのレベルでは止まらない。

iPhoneの高効率なリサイクルを図る分解ロボット

その第一歩が、iPhoneの分解ロボット「Liam(リアム)」だった。2016年に登場したLiamは、iPhone6のタッチパネルをロボットアームでまず本体から分離させると、リサイクルできる部品をセンサーで検出して、パーツごとの分離作業を進めていく。例えば、バッテリーからはコバルトとリチウムを、システムボードからは銀とプラチナを、カメラ部分からは金や銀を取り出していくのだ。

画像=YouTube、Apple Japanチャンネルより

そして、2018年には分解ロボットの2代目「Daisy(デイジー)」が登場した。LiamがiPhone6専用だったのに対し、DaisyはiPhone5からiPhone7までの9モデルに対応している。33フィート(約10m)のスペースで、5本のロボットアームが1台のiPhoneを約3分かけて分解していく様子は、まるでiPhoneの製造工程を逆回ししたかのように見える。

これまでのシュレッダーによる“丸ごと細断”方式では、希土類元素(レアアース)が取り出せず、アルミニウムを再利用できる品質で再生できない問題があった。

しかしDaisyは、高品質なアルミを抽出、回収することができるばかりか、希土類元素やタングステン、アルミ合金などの再利用をも可能にした。これによりiPhoneの高効率でのリサイクルが実現し、同社が目指す持続可能な社会づくりに大きく前進したと言える。