クックのいら立ち「アップルをGAFAと一括りにするな」
そのクックが今、いら立っている。アップルが「GAFA」と一括りに世間で扱われていることに対してだ。
GAFAとはグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字である。そして昨今、「GAFAは個人情報を独占して金儲けをしている」との批判が多く噴出している。
グーグルマップやユーチューブが無料で使えるのは、グーグルが広告で儲けているからだし、インスタグラムが無料で利用できるのは、やはりフェイスブックが広告でガッポリ稼いでいるからだ。グーグルもフェイスブックも、売り上げの約9割が広告収入というビジネス構造なのである。
しかし、アップルはiPhoneやiPadなどの製品を売って利益を上げている会社である。現にクックは、「アップルは広告で儲けない」と繰り返し発言している。個人情報を広告主に売って金儲けをしているフェイスブックやグーグルとは本質が違うと言いたいわけだ。
クックが昨年、「利用者のデータを収集している企業のサービスは、監視に等しい」とターゲット広告で儲けているフェイスブックやグーグルを批判したことは記憶に新しい。そしてこの発言により、クックとフェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOの舌戦が始まった。
ついには腹を立てたザッカーバーグが、フェイスブックの全社員にiPhoneの使用禁じ、アンドロイドを使うよう命じたのは2018年11月のこと。ザッカーバーグは、「アンドロイドが世界で最も人気のあるOSだからだ」とその理由について説明したが、これに社員や世間が冷笑を返しただけであったのは、クックにとって幸いだったかもしれない。
21世紀的な価値がスマホ戦争の未来を左右する
アップルはこれまで、個人情報を大切に扱い、外部に出さないよう注意を払ってきた。マイクロソフトやヤフーが、米政府から命令された途端に尻尾を振ってユーザーの個人情報を引き渡したのに対し、アップルは最後まで抵抗している。
また、FBIと司法省が、捜査のためにiPhoneのロックを解除するソフトウエア――つまりバックドア(裏口)を作れと命令した時も、「バックドアを作ると、全てのiPhoneユーザーの個人情報が筒抜けになる」とクックが拒否したのは有名なエピソードである。
アップルの最新のテレビCMをご覧になっただろうか。「プライバシーは大切」を前面に打ち出した、これまであまり見られなかったタイプのCMだ。アップルは今や、ユーザーにとって個人情報の守護神となっているようでもある。
クックは以前、「もしアップルが、顧客を商品だと思って金儲けに徹すれば、今より多額の利益を上げることができる。だが、アップルはそれをしない道を選んだ」と、フェイスブックとの違いを強調していた。
そのアップルを追撃するファーウェイなどの中国企業は、個人情報の保護も、地球環境保護もどこ吹く風だ。ならば価格や機能だけでなく、個人情報や地球環境といった21世紀的な新たな価値が、スマホ戦争の未来を左右するに違いない。