「壊しながら研究する」子供の驚異的な集中力と探究力

スタジオパパパをつくる前に、同様のスタイルのスタジオを仲間と運営していた。そこで実際に子供に接してみて、窮屈な社会の弊害を実感したという。

壁を赤く塗ってうれしそうな女の子。プレジデントFamilyムック『塾・習い事選び大百科 2019完全保存版』より。(撮影=大森大祐)

「自分で考えて動けない子が多いんです。大人に許される範囲でしか考えたり、行動したりしない。だから、ちょっと失敗しそうだと、すぐに『できない』とやめてしまいます。これでは試行錯誤の末に生まれる革新や新しい物を生み出す創造はできません。だから、ここではすべて自由にしたのです」

藤ノ木さん流の解釈では、あのポスカを切っていた子は「道具について学んでいる」のだという。以前、トンカチでいろんな物を壊していた子がいたが、ある時から急にとても上手にトンカチを使って立派な家具をつくるようになったそうだ。「壊すのも、子供なりの道具の研究なんです」(藤ノ木さん)。

子供に口うるさくダメ出しする親は芽を摘んでいる

スタジオパパパに通う子供たちは何かに没頭しそれを究めていく傾向がある。また教室の時間や自宅で工作する時間を捻出するために、集中力を発揮・維持して宿題を素早く片付けるなど、勉強にも意欲的に取り組むという。

日本にいま、ポスカを切断している子供を見て「道具の研究をしている」と応援してやれる大人がどれくらいいるだろうか。ほとんどは「物を大切にしなさい」と注意するだろう。家の壁にペンキを塗られたら、たまったものじゃない。掃除が大変だから怒ってしまう。

行儀よい子に育てたい、失敗させたくない、と子供に口うるさくダメ出しする親は多い。だが、そのことで豊かな感性や創造の芽を摘んでしまうとしたら、それは大きな損失だ。その意味で、今回紹介したような教室では、子供の中に眠っているアートの才能を発掘できるかもしれない。また教室でのびのびとやりたいことができる「自由」が与えられることで学習面にもいい影響が出るのに加え、教室で培ったアートの素養が将来の仕事で役に立つことも十分ありえるだろう。

(撮影=大森大祐)
【関連記事】
"頭のいい子を潰す"熱い親のヤバい声かけ
国語答案"キモいは×、びびるは○"のワケ
東大と京大では合格者の質が正反対なワケ
"メンタルが強めな人"にある3つの超感覚
「子を怒ってばかりの母親」5つの特徴と、結末