地政学的にも不利になったトルコ

さらにトルコリラの行方を占う上で気がかりな要因として、国際情勢がある。米欧による経済制裁に端を発したリラ暴落が「カショギ事件」で和らいだように、リラ相場は経済的な要因だけではなく外交的な要因にも大きく左右されるためである。特にカギを握るのが、シリア情勢を中心とする中東秩序の行方だ。

米国のトランプ大統領は昨年12月、米軍をシリアから撤退させると表明し、中東におけるトルコの存在感が高まるかに見られた。ただ今年に入ってボルトン米大統領補佐官が、米軍撤退の条件としてトルコ政府に本来敵対関係にあるクルド人勢力の保護を要求したことによって、米軍撤退の意向は事実上、撤回された。

またクルド人勢力が、同じくトルコと敵対関係にあるシリアのアサド政権に歩み寄ったことを受けて、この動きを歓迎するロシアとトルコの外交関係にも影が差した。ロシアはトルコと敵対するイランやサウジアラビアとも友好的であるため、ロシアのとの関係悪化はトルコの孤立につながることになる。

ロシアに近づくほど、欧米との関係は悪化

1月下旬にエルドアン大統領はロシアのプーチン大統領を訪問するなど、関係改善を図っている。ただロシアに近づけば近づくほど、トルコと欧米の関係は悪化する。先の「カショギ事件」で見せた巧妙な立ち回りの賞味期限は切れており、トルコを取り巻く国際政治環境は足元では厳しさをむしろ増している。

外交的に劣勢が明らかとなる中で、エルドアン大統領は敵対関係にある諸外国からの選挙介入に対する警戒感を高めているようだ。例えば、腹心のソイル内相は1月下旬、統一地方選に際して諸外国からサイバー攻撃が起こり得る可能性に言及し、選挙介入への牽制を行っている。