2009年2月の「クリアアサヒ」累計1500万ケース達成のマスコミ発表会。CMキャラクターを務めるビーチバレーの浅尾美和も登場した。08年3月の発売からすでに1720万ケースを達成した。
2009年2月の「クリアアサヒ」累計1500万ケース達成のマスコミ発表会。CMキャラクターを務めるビーチバレーの浅尾美和も登場した。08年3月の発売からすでに1720万ケースを達成した。

パッケージと同じ黄色と白を基調に設営された会場には多くの報道陣が詰めかけていた。今年2月3日、アサヒビールが久々に放ったヒット商品「クリアアサヒ」の累計売り上げ1500万ケース(一ケースは大瓶20本換算)達成のマスコミ発表での光景だ。

会見冒頭、挨拶に立った同社常務取締役酒類本部長の泉谷直木(現専務)は自信に満ちた笑顔で、こう語った。

「おかげさまで、昨年3月発売後11カ月で1500万ケースと、大変高い評価を得ました。新ジャンル、いわゆる第三のビールでは、よりビールに近い麦由来原料の味わいが支持されてきています」

舞台にはCMキャラクターでビーチバレーの浅尾美和選手も駆けつけ「絶好調の『クリアアサヒ』にあやかり、私もナンバーワンをめざします」と話し、泉谷が強調する“麦の新ジャンル売り上げナンバーワン”に花を添えた。ビールメーカーは、売れる商品が出れば勢いがつく。それをつくづくと感じさせるシーンだった。

振り返ってみれば、この3年間、アサヒビールは試行錯誤の連続だった。

ビール4社ビール系飲料のシェア推移

ビール4社ビール系飲料のシェア推移

発端はキリンビールが発売した「のどごし〈生〉」。2005年の発売以来、売り上げを伸ばし、アサヒのビール系飲料シェアを猛追。06年の第1四半期(1~3月)のビール系飲料シェアの数字に異変が起きた。01年にキリンビールを逆転して以来、5年間守り続けた業界トップの座を、第1四半期とはいえ、再びキリンビールに明け渡したのだ。ちなみに、キリンが38.4%、アサヒは36.0%だった。

アサヒの“不動の四番”である「スーパードライ」の効果で、ビールでは圧倒したものの、01年に参入した発泡酒、05年から発売した新ジャンルでの出遅れが響いた。この間キリンは、発泡酒では「淡麗〈生〉」、新ジャンルでは「のどごし〈生〉」で、着実に売り上げを伸ばした。一方、アサヒは「本生」あるいは「新生」など、両ジャンルの主力商品が苦戦した。

アサヒにしてみれば、ここで巻き返しを図らないと、ずるずると後退しかねない状況に追い込まれた。同社が行ったのは、シェア逆転がほぼ確実となった3月、荻田伍への社長交代である。そのとき、酒類本部長になったのが泉谷だった。