【佐藤】その意味では、やはりターゲッティングした教育が非常に重要になってきます。ただ、こういうことはないですか? 外務省でも、キャリア、ノンキャリアにかかわらず、最初の5~10年くらいまでは、一生懸命仕事をするのですが、中間管理職ぐらいになってから、疑問符がつくような行動を取る人が出てきます。

丸紅社長 國分文也氏

例えば、外交官の場合、仕事のために自分の給料から必要経費を支出することがあります。そうすると、上司は一生懸命に滅私奉公していると評価して、公金を付けてあげようということになる。でも、滅私奉公型の人が、いつの間にか公金で競走馬を買ったり、愛人にアパートを与えたりしてしまうことがあります。

人間の認識は非対称ですから、公金を使える立場になると、昔自分が使った分を補填してもいいという発想になってしまうのです。滅私奉公型というのは、こうした失敗につながりやすいのです。

【國分】よく「自腹を切る」という言葉がありますが、私は会社のためにかかった費用は会社が払うべきだと思っています。滅私奉公型の人の中に、何でもブラックボックス化してしまう人がいます。仕事は取ってくる。でも、どうやって取ってきたのか、よくわからないことがある。仕事はできるのですが、非常に怖い面があります。

脈々と受け継がれる悪に対する教育

【佐藤】商社パーソンを見ていて、すごいと思うのは、教育の中に悪に対する教育が入っていることです。要するに、どのようにすれば悪事に巻き込まれないのか。ここまでは付き合ってもいいけれど、ここから先はやってはいけない。そうしたところを商社パーソンはよく見ていると思います。

【國分】規範や尺度は時代によって変わっていきます。かつては清濁併せ呑むことが必要だと言われたようなことも、今ではコンプライアンスが優先されます。私の感覚では、法律を遵守していることは当然で、そのうえにさらに、フェアかアンフェアかというところに価値基準がなければいけないと思っています。商社パーソンは個人の信念がしっかりしていなければならないのです。