「食えるほど」もうけが大きいか

私のイラスト販売は、波はありましたが月5万~10万円程度は売り上げていました。ただ、これでは食えないので、副業としてサラリーマンをせざるをえなかったのです。私の胸中では本業がイラスト描き、サブがサラリーマンです。したがって、イラスト販売で得る所得は事業所得として確定申告をしていました。この理屈が、国税当局に通用するかどうか。

事業所得とは個人事業主が行う「事業」のもうけであり、雑所得とは10種類ある所得のうち、どれにも属さない所得のことです。一般的にサラリーマンの「副業」から得たもうけは、雑所得に区分されます。ただし、「食えるほど」もうけが大きい場合は、事業所得になります。

国税庁は事業所得と雑所得の境界線をあいまいにしており、明確な線引きをしていません。事業所得は給与所得と損益通算が可能ですが、雑所得はそれができません。言い換えると、副業収入が事業所得として当局から認められず、雑所得に区分替えされると損益通算ができないため、「副業で税金ゼロ」は不可能になります。

節税は「長期積立貯金」と同じ

課税所得(年収のうち税金がかかる部分)がゼロ円なら、天引きされた所得税の全額が戻ってきます。戻ってくる金額は、納めた所得税次第ですから、人によって違います。所得税がゼロ円になれば、本来払うべき住民税もゼロ円になります。住民税がゼロ円になると非課税世帯になり、市町村の公共サービス(国民健康保険料、教育補助費、市営住宅の家賃など)の負担が、課税世帯より大幅に優遇されます。

では、「無税」になると、一体どのくらいの稼ぎになるのか? この答えは何年間、無税を継続し、その間に所得税がいくら返ってきたか、住民税タダ状態が何年続いたか──この2つの要素から算出できます。

1年や2年だけ「無税の人」であっても、大した金額にはなりません。また、副業が黒字になった年は、所得税は1円も戻ってこないばかりか、黒字分の税金を納めるので、給与と副業のダブル納税となります。長期間、「無税」を続けるには、課税所得をゼロ円にする「赤字の副業」を長期間、続ける必要があります。生活を圧迫しない「赤字の副業」を永続的に営めるかどうか、ここがポイントです。

節税は「長期積立貯金」と同じで、地道に長年続けなければ、何百万円という大きな金額には膨らみません。何十年も(できれば定年まで)、還付金を受け取り続ければ、累積額は1000万円超も不可能ではないでしょう。ただ、1000万円の中には、本来払うべき住民税も含みます。