くも膜下出血は、動脈瘤が破裂するまでほとんど自覚症状がない。だが、動脈瘤が破裂すると、雷が落ちたような激しい頭痛や吐き気、意識障害などの症状が出る。近年では、俳優の星野源さん、globeのKEIKOさん、元巨人の木村拓也さん(故人)が発症したことでも有名だ。

星野さんのように社会復帰を果たすのは、発症例のうち4割程度。この4割には、後遺症により何らかの支障があったとしても自立した生活ができる人も含まれる。KEIKOさんは現在もリハビリ中とされているが、重い後遺症が残るのは全体の2割。残りの4割は死にいたる。木村さんのように、脳動脈瘤が破裂して間もなく死亡するのは、全体の1割ほどだ。

「後遺症はさまざまで、運動麻痺から言語障害、記憶や知覚など精神機能に関わる高次脳機能障害などがあります。あるいは、尿失禁や歩行障害を伴う水頭症(※)なども起こります」

※髄液が過剰に溜まり脳室のスペースが拡大

手術・入院の費用は、最低でも100万円。高度な手術が必要なことに加え、入院期間も1~3カ月程度と長くなることが見込まれる。さらに、集中治療室にいる時間も長いので、費用がかさむ。

では、未然に動脈瘤の発生は防げるのだろうか。

「動脈硬化を防ぐことです。タバコは1本も吸ってはいけません。アルコールは、1週間に150グラム以上の飲酒がリスクを高めます。1日あたりの目安は、清酒であれば1合、缶ビールや缶チューハイは1缶、焼酎は80ミリリットル程度が上限。あとは高血圧や悪玉コレステロール値が高くなる脂質異常症の放置も、動脈硬化の原因になります」

▼CHECK POINT
【初期の症状、予兆は?】
吐き気を伴う頭痛。特に市販の頭痛薬が効かない場合は要注意。
【典型的な症状は?】
雷が落ちたような激しい頭痛。吐き気、意識障害なども。
【最悪どうなってしまう?】
発症した場合約4割は死にいたる。生存しても約2割は重い後遺症に。
大石英則
順天堂大学医学部脳神経外科教授
順天堂大学卒。専門は脳神経血管内治療、脳血管障害、脳神経外科一般。現在は日本脳神経血管内治療学会会長を務める。
 
(撮影=的野弘路 写真=iStock.com)
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