一般的な進路でも教育費貧乏の可能性
主人公である上野勉の家庭の例はやや極端ですが、年収1000万円程度の家庭でも、子供の教育にお金を注ぎ込みすぎると、状況次第では、同様の事態に陥りかねないのが今の時代の現実です。
教育費に関する指標は様々なものがありますが、結論はほぼ同じ。作中に登場するのは、文部科学省が公開しているデータなどから、書籍『宝くじで1億円当たった人の末路』に登場したファイナンシャルプランナーの小屋洋一さんが試算したものです。これによると、次のような試算となりました。
(1)幼稚園から高校まですべて私立だと約1600万円
(2)大学は私立の場合、年間200万円ほど(自宅以外から通学した場合)
(3)幼稚園から大学まですべて私立に通った場合、1600万円+(200万×4年分)で合計2400万円の教育費が発生
もう少し一般的なルートで中学まで公立で高校から私立でも総額約1490万円になるそうです。
高校も大学も公立で自宅から通学する場合は、負担はかなり軽減されますが、それでも約1000万円は覚悟しなければなりません。バイリンガルだの何だの言い出さず、ごく一般的な進路を選んだとしても、子供の数など状況次第では、教育費破産(困窮)しかねないというわけです。
「子供がいない人生=不幸」ではない
「たとえ自分の生活が窮しようとも、子供は素晴らしく、子育てにはお金に換算できない価値がある。子供さえいれば貧乏でも幸せになれる。子供がいないのは不幸だ」。そんな意見もあるとは思われます。が、これについても気になるデータや統計があります。
例えば、プリンストン大学とストーニーブルック大学の研究チームの調査では、「子供の有無で夫婦の幸福度に差はない」という結果が判明しています(調査期間は2008~2012年、約180万人を対象とした米ギャラップ社の調査を活用)。
また英オープン大学が約5000人を対象に実施した調査では、夫婦関係の満足度は、子供がいない夫婦の方が子供がいる夫婦よりも高い結果となっています。