広島に本社を置くスーパー「you me」(イズミ)を担当する鶴岡英樹。07年に大手食品メーカーから転職した。サントリーのビールが好きで、好きなものを売りたいというのが転職の動機だった。広島はかつてキリンの工場があった地。特に年配にキリンのファンが多い。

「それしか飲まない、というお客さまが多かったんです。だからまずはサントリーのファンを増やすことが大事。とにかく飲んでいただいて、美味しさを体感していただく。スーパーの売り場は誰でもどの商品でも自由に手に取れるわけですけど、ここで売るのは意外に難しい」

客だけではなく、スーパーのバイヤーや店の担当者にもファンになってもらわなくてはいけない。ほとんど机にいることがない、と上司に言わしめるくらい、鶴岡は売り場に顔を出す。販促活動をしながら客の動きを見ている。たとえば第三のビール500ミリリットル缶を買う客は2本ずつ篭に入れることが多いことに気付いた。そこで「金麦・500ミリリットル缶2本セット」を作ってスーパー本部に提案したこともあった。

イズミのバイヤー梅田秀樹(写真左)は、サントリー鶴岡英樹(写真右)のど根性に喝采、機会損失の防止を徹底する。

イズミのバイヤー梅田秀樹(写真左)は、サントリー鶴岡英樹(写真右)のど根性に喝采、機会損失の防止を徹底する。

鶴岡には基本的なモットーがある。

「商談では、売り場づくりなどで結構難しいことを言われることもあるんですが、必ずイエスから入るようにしています。それは無理だ、という場合もあるんですけど、そんな中でもなにかしら解決策はないか、と考えます」

売り場で商品が足らなくなり、明日までに相当数を用意しろ、というリクエストもある。時間的にも物理的にも厳しく要求の満額はダメでも少しはなんとかできるように動く。口先だけのイエスマンではない。言ったことをなんとか実行してきた。そんな営業姿勢が店側にも好感を持たれ、信頼を得て評価され、売り上げを伸ばしていった。