職場の「世代間ギャップ」が、さまざまなトラブルを引き起こしている。福井県のある中小企業では、若い女性社員だけに”雑用”が回され、男性社員は見逃されていた。労働相談を受けた社労士が聞き取ったところ、問題の背景にあるのは「女性の働き方」に対する世代間ギャップだった。価値観の違いを乗り越えるには、どうすればいいのか――。

職場内のトラブルを話し合いで解決

私は、2009年から2015年まで、個人で社会保険労務士事務所を開業していた。中小企業の顧問社労士を務めるかたわら、労働局で総合労働相談員として従事。長時間労働や賃金未払いなどの労働基準法に準拠する内容から、退職勧奨や不当解雇などの民事トラブルまで、4,000件近い労働相談に対応した。

当時私は、福井県で唯一の困難事案担当として、解決困難な相談事案を担当する役割も担っていた。職場内のこじれた関係性に第三者として介入し、問題点を整理しながら解決の方向性を示していく。もちろん、当事者間による自主的な解決を促すことが目的なので、なんら強制力はない。しかし、専門知識をもつ私のような第三者が介入することで、話し合いが促進され、解決に結びつくケースも少なくない。

新人女性だけが「雑用」を担当

かつて私が相談対応した中に、女性同士の世代間ギャップにより職場トラブルに発展した事例がある。

Aさんは県内の中小企業に新卒入社した20代女性だ。40~50代の女性が多い部署に配属され、仕事に取り組んでいた。実はAさんには、ずっと気になっていることがあった。それは、職場の雑用を「新人だから」という理由で当たり前にやらされていることだった。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

そんな状態が2年ほど続き、後輩が入社した。B君という男性だ。「ようやく雑用から解放される!」と喜びもつかの間、B君に対する周囲の反応がAさんの時とまるで違う。これまでAさんが「新人だから」という理由でやらされていた雑用を、先輩女性たちが新人のB君に任せる気配がまるでないのだ。

数カ月がたち、Aさんは自分から「これからはB君に任せればいいですよね」と切り出した。すると先輩女性たちは「話し合いで決めましょう」と話をはぐらかし、結果、職場の雑用は当番制になったのだそうだ。

Aさんにとってみたら、なんだか釈然としない。仕事に対する意欲が一気にうせ、先輩女性たちとの関係性も悪くなった。「友達に話したら、それってパワハラだから相談したほうがいいって言われたので、相談に来ました」と話す声に力がない。