まっすぐな線引きで、美しい文字が書ける
約40日かけて練習して感じたのは、細かいことより全体のバランスが大事ということ。「文字の中心をそろえる」「文字の大きさのバランスを意識する」ことができれば、個々の文字が多少汚くても全体として整って見える。また、ただお手本を真似して書くだけでは身につかない。自分で考えながら書かないと応用が利かないのだ。
『まっすぐな線が引ければ字はうまくなる』という本も試してみた。同書では、美しい文字を書くための条件として、(1)脳に「美しい字のイメージ」が完全に焼き付いていること。(2)そのイメージを正確に再現する腕の使い方を訓練していること――の2つを挙げている。これらが身についている書道家は、筆だけでなく万年筆やボールペン、チョークによる黒板書きでも美しい字が書けるそうだ。(2)を実践するのに必要なのは「まっすぐな線を引くこと」。ヒジをうまく使うのがポイントとのことで、そこを意識しながら線を引いてみるが、どうしても微妙に蛇行してしまう。
上品な女性の先生が、赤ペンで二重丸
練習帳のお手本のようにはいかなくても「うまく見える字」が書ければいいという人は多いだろう。その名もずばり『練習しないで、字がうまくなる!』によれば、(1)道具を選ぶ、(2)字にメリハリをつける、(3)ヘタだからこそ一手間加える、というのがその秘訣。道具は、着色料に顔料を使ったゲルインクのペンがおすすめだ。油性ボールペンと比べると格段に書きやすく、うまく見える。メリハリをつけるには、起筆、トメ、ハライをはっきりさせること。そして、一手間加えるとは、たとえば祝儀袋などに名前を書く際に鉛筆で補助線を引くことだという。うまい人ほどゆっくり書くのに、ヘタな人が速く書いてどうする。せめて一手間かけろというわけだ。
しかし、1人で練習していても限界がある。そこで腹をくくって、ペン字教室に通った。1回100分の授業が月に3回、6カ月で終了の初級コース。授業といっても講義を聴くわけではない。各受講生が進行度、レベルに応じた練習をして、それを随時先生に添削してもらう形式だ。書き込み式のテキストに、お手本と解説を見ながらひたすら書く。頃合いを見計らって先生が声をかけてくれ、その時点で書けた分を見てもらう。
「いいですねー。とてもよく書けています」
物腰やわらかく上品な女性の先生が赤ペンで二重丸を付けてくれる。思いがけず褒められるとうれしいもの。目の前で添削されると、お手本と自分の字の違いに気がつき、「なるほどそう書けばいいのか」と納得できる。この点が、書きっぱなしで終わってしまう市販のペン字練習帳との大きな違いだ。