そこはドラマにもあったように、芸人の種類やその順番という番組編成が重要ではあるのだが、何よりも、かんじん要なことは、舞台に立つ芸人が面白いかどうかである。どう面白いかは観客の感性によるのでここではく詳しく分析しないが、拍手をもらって笑ってもらってなんぼのものなのだ。

芸人が面白くなっていく要因はいくつもあるのだが、ここでは、芸人が寄席小屋の舞台に立つ前、立ったあとに観客との「共感」を見つけて笑いをとる技術について、見てみよう。

芸人は舞台袖で観客との「共感ポイント」を探す

竹中功『他人も自分も自然に動き出す 最高の「共感力」』(日本実業出版社)

芸人が控えている楽屋にはモニターのスピーカーがついており、舞台上の芸人の模様をリアルタイムで聞くことができる。客席が大爆笑ならその笑い声も舞台のマイクがひろってくれる。出番を控えている者はそのネタの内容などを聞きながら、今日の観客の笑いのツボを探している。

「昨日のプロ野球のネタが今日も受けているな」とか、「伊勢参りや二見浦に行ったことがあるというネタが受けているので、年配のかたか、三重県方面の団体さんが来ているのかな」とか、「このテーマなら前の芸人のネタとかぶるから今日はやめよう」、などと感じとるのである。

そして、舞台衣装に着替え終わった芸人は、自分の出番の15分とか20分前には、舞台袖に移動し、自分たちの出番の一組前のネタを聞き入るのだ。

そこではどんなネタをしているか、どこが受けているか、またどこがスベっているかをじっと見て聞いている。自分の前の出番の芸人が昨日までの舞台とは「ネタのここを変えてきたな」なども感じながら、観客の笑うツボを探すのである。

一流のマッサージ師が、お客さんの反応や自分の指の感触などで、押さえる場所を変えたり、強さを変えたりするように、話芸を生業とする者は観客との「共感力」を探し出す能力が高いのである。