夏は“閑散期”のスープ専門店はカレーで大繁盛

そんなカレーの知名度をさらに高めたのが、2016年に始まった、その名も「カレーストックトーキョー」だ。

そもそもスープストックの場合、メニューは各店舗とも8~10種類あり、顔ぶれを週ごとに替えてさまざまな味を楽しめるようになっている。従来のカレーの枠はその8種類中の1つだけ。つまり、食べたいカレーが、その日のメニューにあるとは限らないわけだ。

カレーの評判が高まるにつれて、「もっとカレーを増やしてほしい」「食べ比べしてみたい」といった声があがりはじめていた。一方で、スープ専門店だからこそ、カレーの充実度がなかなか知られていなかった。そんな中、毎年6月に1日限りのイベント「カレーストックトーキョー」を始めた。

夏に人気なのはカレーと冷たいスープの組み合わせ(写真提供=スープストックトーキョー)

この日は店舗からスープがすべて消え、メニューはカレーのみ。スープ専門店でスープを出さないとはまさに大英断だが、評判は上々。3年目の今年は全店舗合計約2万7000杯が販売され、売り上げも前年比130%と大幅にアップした。

桑折さんによれば、この日はお客の顔ぶれも様変わりするという。

「通常は8割が女性のお客さまなのですが、カレーファンの男性の姿がぐっと増えます。『初めてスープストックに入った』という方もいらっしゃるんですよ」

さらに、この「カレーストックトーキョー」期間は、毎週2種類ずつ週替わりで計12種類のカレーが登場するフェアを全店舗で開催。この期間にしか食べることのできない冷たいカレーもあり、カレー目当ての客が多く訪れるのという。桑折さんの考案したカレーが、スープストックを「カレーストック」に変えてしまったのだ。

絶品メニューをいかにして開発するのか

もちろん、そのメニュー開発の手腕はスープにも発揮されている。これまでに生み出したレシピは、カレーとスープをあわせて約200種類にもなる。豊かな発想はどのように生まれているのだろう。

「たとえば、カレーの新メニューを考える場合、アプローチの方法は3つあります。1つは、さまざまな国と地域の人気メニューの置き換え。2つめはオリジナリティ。3つめは本場の味の探究。これらを柱に考えていくと、いろいろなアイデアが浮かぶんです」

桑折さんが入社して最初に手がけた「ラタトゥイユカレー(後に「7種の野菜のラタトゥイユカレー」に変更)」や「ぶどう山椒の麻婆カレー」は、人気メニューをカレーに置き換えたもの。オリジナリティ系の代表作は今年の場合、開発チームの新商品である「茄子と牛挽肉の辛くないキーマカレー」だ。17種類以上のスパイスを使いながらも、“カレー=辛い”という概念が覆されている。同じく今年の新商品、「豚トロのビンダルーカレー」は本場の味を探究した成果。西インドのゴア地方に伝わる酸味のあるカレーがベースになっている。