「本委員会の認識している資料」とはどんなものなのか

一方で、被害女性や喫茶店で同席した元同級生の女性は「現代文芸コースがつぶれるかもしれないから、口外しないでほしい」とコース主任が述べたと主張しているが、報告書では「教授は『学術院事務所に言わないでくれ』または『いってほしくない』とは言っていないと明確に否定している」「コース外に言わないことを求めたことまでは認められない」としている。また、被害女性らに対して「ハラスメント委員会とかに言ってほしくない」と言ったことは、男性教授が否定しているほか「本委員会の認識している資料等からは、同発言の存在を認定することはできなかった」と結論付けた。

そのことについて被害女性は「この発言については、喫茶店で隣で会話を聞いていた元同級の供述もあるはずです。それでも調査委に認めてもらえないのであれば、どうすれば証明できるのでしょうか。また、この報告書には『本委員会の認識している資料』というものが度々出てきますが、どんな資料なのかわかりません」と困惑する。

2008年より早稲田大学文化構想学部の文芸学科文芸・ジャーナリズム論系で教授を務めていた渡部直己氏(大学ウェブサイトより)

「被害女性にお礼を言わせる」は不適切

さらに、被害女性は、元コース主任とは別の男性教員から「君がここまで成長できたのは、渡部先生のおかげなんだからちゃんとお礼を言ってあげて。もうおじいちゃんなんだから」と言われたと主張している。

報告書によると、男性教員はその主張に対し、「ぼくが教えたことの半分くらいは、ぼくが師匠である渡部教授(原文ママ)から教わったことです。結局(被害女性)が祖父から受け取ったようなものだから、よければ卒業までにひとことお礼を言ってあげてくれたらうれしい」などと発言のニュアンスを説明している。

これに対し、報告書は「申立人の中で渡部教授からのハラスメントが解決していなかった以上、上記のような発言を行うことは、不適切であったと言える。なお、解決されていたと思っていたとしても、ハラスメント被害者である申立人から渡部教授に対し、お礼を言うなどして歩みよることを助言することは適切性を欠いているといえる」とした。

早大広報課によると、この男性教員を巡っては、被害女性が大学に苦情を申し立てた件とは別に、授業の休講などについても調査を続けているという。