13店中9店が過去最高を記録

現在は、店舗13店のうち9店が過去最高を記録している。特に、ひたちなか市の本店は絶好調。「週末には前年比150%になる日もあります」(会長の鈴木誉志男さん)。開業数年の店ならともかく、来年で創業50年の店だ。

主な理由は、従来の知られざる人気に加えて注目度が高まり、メディアが取り上げる機会が増えたこと。たとえば今年4月には、テレビ番組『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)で紹介され、翌日から本店にはお客が殺到。しばらくの間、平日でもお盆時期のような大混雑が続いた。そんな「地方繁盛店」の人気が、他の店にも波及している。

パナマのゲイシャコーヒーの品評会で国際審査員を務める副社長の鈴木太郎さん(写真提供=サザコーヒー)

創業者は式典終了後も、店を手伝う

現在のサザを学校に例えると、会長が理事長、社長が学園長、副社長が学校長といったところか。生徒(社員)は“校長の情熱”に影響されるが、最近、興味深い体験もした。

ひたちなか商工会議所会頭も務める鈴木会長と、夏の土曜日、市内の企業の式典で一緒になり、終了後にサザ本店に戻った。ふと姿が見えないなと思ったら、カウンターに入って皿洗いをしていた。式典で「会頭」として祝辞を述べた後、店に帰り、混雑ぶりを見ると「コーヒー屋のオヤジ」に戻っていたのだ。

創業者がこの姿勢なら、社員も夢中になる。総じて、同社社員の労働時間は長く、大会直前のバリスタは、寝袋片手の生活に入る。「働き方改革」としてはいただけないが、みんな「ウチの労働時間は“ブラック”ですよ」と苦笑いしながら手を動かす。業種を超えて、活気ある会社によく見られる光景でもある。サザコーヒーには、若手を「本気にさせる」本質がありそうだ。

高井 尚之(たかい・なおゆき)
経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
1962年名古屋市生まれ。日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。
(写真提供=サザコーヒー)
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