18年度から有料化に確かな手ごたえ

「コアの技術は『正規化植生指数』という汎用技術で、特許の問題はありません。会社に確認をすると『どうぞ思うように』とのことで、16年10月に『スペースアグリ』を設立しました」と瀬下さんはいう。帯広市内の本社兼住居のアパートにあるデスクと椅子は、会社が捨てようとした前の事務所のものを使っている。

知人の本多潔・中部大学教授の協力を得て、解析アプリを新たに開発し、精度や操作性を高めたデータを17年5月から、17年度末までのトライアル期間の無償サービスとして十勝と斜網の農家に提供を始めた。すでに両地区を合わせ、99軒の農家と80の団体が利用している。18年度から10アール当たり年間200円程度の有料とする。それまで瀬下さんは月額20万円の役員報酬でしのぐ。

「目標の年間売上高は事業継続に必要な数千万円です。そして、晴れたら翌日に3メートルの分解能の衛星リモセンデータを安価で提供し、自動的に肥料の量を制御するなどの付加価値を高め、イノベーションを起こしたいと考えています。9月の十勝農協連でのプレゼンでも手ごたえが十分ありました。お金儲けではなく、この事業を10年、20年と続けることが最終目標です」と瀬下さんは話す。

大企業のなかには、事業化のメドがついたのに埋もれてしまったビジネスシーズが数多くあるはず。瀬下さんのようなビジネスモデルの継承という形で、自営型起業を果たす人がこれから続出してくるのではないか。

(撮影=石橋素幸)
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