数週間後「何かやっているでしょう?」と言われた

私の場合、数週間で「結果」が出始めた。久しぶりに会った友達に、いきなり「何かやっているでしょう。顔色のトーンが上がっている気がするけど」とうれしいツッコミが入った。そうなると習慣とはおそろしいもので、もう私の中にファンデを塗るという行為は消えてしまった。

代官山のサロンのオーナー・宮久安紀子さん(53)。写真=本人提供

この“素肌教”に入信して1カ月半。ずっと気になっていた目の横のしみが薄くなり始めた。シミはごく小さいものだ。自分しか気づかないレベルのものだが、確実にある。そのシミが、確実に薄くなってきたことに、ひとりほくそ笑んだ。

以上の一連の話を周りの同世代の女子にすると、みんな耳がダンボ状態になる。そして、筆者が友人に言ったように、「そのサロンへ今すぐ連れて行ってほしい」と口をそろえる。

なぜ、人生後半に差し掛かった女子たちは、こんなにも素肌磨きに関心があるのか。そしてそこにお金をつぎ込むのに躊躇がないのだろうか。

はたと気づいたのだ。いまさら恋を始めようというわけでもないのに、なぜキレイでいたいのか。それは、「終活」としての美肌作りが始まっているのではないか、と。

50代は「終活」としての美肌作りを始める年代

女性の寿命は86歳。この先もっと延びることが確実視されている。病気がなくなれば、120歳まで生きられるという説もある。途方もなく長い話だ。

だが、人生半ばも過ぎると、「後半」について考え始める。年金生活が始まる老後生活のさらにその先。自分はどう老け、死んでいくのだろうか、と思いを巡らす。

以前、本欄で「介護される日に備えて下半身脱毛をするマダムが増えている」という話を書いた(「中年女子の『下半身脱毛』介護される日に備えて」)。自分を介護してくれるスタッフが男性であれ、女性であれ、下のお世話を全面的に委ねることになった時、あまり面倒はかけたくない。短時間でささっと済むような状態にしておきたい。そう考えると、毛は邪魔だ。そんな内容だった。

自分で取材して書いておきながら、そのときはまだ、信じがたい部分があった。しかし、この話題が今は女性たちの間で持ちきりである。

親の介護をする人も多い50代。すると、いろいろと「現実」が見えてくる。もし、自分が介護される側になったら、下の世話はちゃんとしてもらえるだろうか、という不安からの脱毛と同様に、毎日やっている美容についてもふと心配になる。

自分が介護施設などに入居したら、いちいち自分でファンデーションなど塗ることはないだろう。また介護ヘルパーさんにきれいに塗ってもらえるなんてこともないだろう。介護施設や病院の住人になったら、当然スッピンだ。

そのとき自分は「キレイ」をたもてるだろうか。ならば、今からスッピンを磨こう。そんな発想が筆者を含むアラフィフ以上の女子の中で無意識に湧き上がってくるである。