今、何千万円もする美術品も十数年前は数百万円で買えた

投資対象は、何も金融商品に限らない。世界的な金余りの余波を受け、「アート」「コイン」「レコード」なども、富裕層の投資対象になっている。投資目的で購入する場合の注意点をプロに伺った。

海外からも高い評価を受ける草間彌生。(AFLO=写真)

まずはアート。茶道具を中心に多くの美術品を扱う北山美術の藤生洋氏によると、現在、価格の面で突飛高なのは「現代アート」と「中国の美術品」だという。例えば国内外で高い評価を受ける現代アート作家の草間彌生。1990年代にはサムホールサイズ(22.7cm×15.8cm)で10万円くらいだった作品が、現在では1000万円はくだらないという。

「現代美術の中でも抽象画家の白髪一雄、画家で絵本作家の元永定正といった『具体美術』と呼ばれるジャンルの人たちは総じて上がっています。海外だと、バスキアやアンディ・ウォーホル。バスキアは、スタートトゥデイの代表・前澤友作氏が123億円で落札して話題になりました。ウォーホルの作品が100億円で取引された例もあります。驚くほどの高値ですが、今だと何千万円もする作品も、十数年前は数百万円で買えたものも多いのです。日本の現代アートは、ウォーホルやバスキアに比べたら、まだ割安という声もあります」(藤生氏)

「中国の美術品」の値段が上がっているのには理由がある。

「中国との関係が密接だった日本には、中国の貴重な骨董品や美術品が流れているんです。7、8年前から中国人のディーラーがそれを買い戻しにきているため、ここ最近、高値で取引されるケースが増えています。例えば100万円で売買されていた掛け軸が1億円で売れたりすることもありますよ」(同)

次なる目の付けどころとしては、ベトナムやラオス、バングラデシュなどの発展途上国のアンティーク。中国の美術品の値段が上がったのと同じ現象が起こる可能性は高い。

日本の陶磁器では、柿右衛門など素人でもわかる綺麗さを持つもの、名前が有名なもの、作者が文化勲章受章など権威があるものは、時間がたっても値段が下がらない可能性があるとか。

「人気の陶磁器は株の動きと連動しますから、株安のときに購入すると値上がりするかもしれません。いずれにせよ、美術品は値段が上がらなくても持っていて楽しいと思えるものを買ったほうがいいと思います」(同)

▼アート
現代美術と中国の美術品が高騰
●草間彌生の「アート作品」の値段
・90年代/10万円
・2010年/200万円
・2012年/100万円
・2014年/1000万円←2年で10倍に
・2017年/1000万円

草間彌生の作品(サムホールサイズ)の値段の推移。約25年間で100倍に値段が跳ね上がっている。日本の現代アートの作家が世界で高く評価されたことが背景にある。
●投資のポイント
・素人でもわかる綺麗さ
・誰でも知っている名前
・権威がある
・若い層に需要がある