テレビ局の人間は職能的サラリーマンにすぎない

テレビ局の人間は何か特権的自意識を持っているのではなく、日々の業務に忙殺される職能的サラリーマンで、その感覚は一般有権者のそれと大差ない。そして、地味で目立たない女性議員よりも、派手で美人な女性議員の失言やスキャンダルや不倫報道ばかりをメディアが追いかけるのは、結局それを多くの市井の人間が見て視聴率として追認しているからであり、テレビ局の人間が悪いわけではない。そしてこの構造自体が異常であると、有権者の大半は自覚的ではない。

古谷経衡『女政治家の通信簿』(小学館新書)

とはいえ、地味でメディアの耳目を集めない上川が法務大臣として入閣しているのは、その高い政治的実務能力が評価されての事である。

上川は、自民党内派閥では保守本流の岸田派(宏池会)に属し、保守リベラルの顔をのぞかせる。実は上川が第二次安倍政権で法務大臣を務めるのは2014年に次いで二度目である。岸田派よりあきらかにタカ派色が強い清和会の杉浦正健は、小泉内閣下で法務大臣に就任したにもかかわらず、自身が真宗大谷派の信徒である事を理由に事実上、死刑執行を拒否した。

20年ぶりに犯行時19歳の少年の死刑を執行

それに比べて上川は、二度目の法相就任後の2017年12月、20年ぶりに犯行時に19歳の少年だった元少年の死刑執行を含む2名の死刑を執行した。厳格な法の支配とその執行を忠実に履行する法務大臣のメイン職責においては、地味ながらもその重責を果たしていると言える。

はからずも、1995年の地下鉄サリン事件から23年が経過し、全てのオウム事件裁判が結審した。死刑執行の準備段階とも観測されていたが、上川法相下で麻原死刑囚らの刑が執行された。平成の事件史に刻まれた凶行に、一つの終止符を打ったことになる。

目下、第二次安倍政権下では公文書改竄問題が最大の焦点になっているが、上川は福田康夫政権下、2008年に公文書担当大臣に就任していることはあまり知られていない。