民主主義で最も重要なものは「公文書管理」
このときの公文書における課題は、森友学園ではなく、年金記録の紛失や厚生労働省がC型肝炎ウイルスに感染していた患者リストを省内倉庫に放置していた問題などが表面化していたためで、上川は同内閣においてこの問題の担当責任者になった。上川は2008年、尾崎護(「公文書管理の在り方等に関する有識者会議」座長)との対談の中で、
〈民主主義の基本は、国民の皆さんが自ら考えて選択していくということです。その選択をする上で最も重要なものである文書情報=「行政文書」をしっかり管理していくということが「公文書管理」ということになります〉
とした上で、
〈公文書管理体制を作る、というのは一から興す作業じゃない。過去の体制にもう一度戻す作業なんだと。そう考えると違和感も重荷もだいぶ軽くなりました。昔やっていたんだからできるよと。「担当者が変わったのでプロセスがわかりません」「記録がないのでわかりません」なんて、民間企業だったら左遷の対象です。とてもプロの仕事じゃない。省庁を回らせてもらった時も、「公務員の皆さんは本当に質のいい仕事をしてるんだから、堂々とやろうじゃないの、しっかり記録を残していこうよ」、と前向きなイメージを持って臨みました〉
と宣言した。上川の公文書担当大臣就任からちょうど10年がたつが、この間、公文書に関する問題は、「紛失」とか「置き忘れ」などといったケアレスミスを越えて、「改竄」に至るまでに発展している。
公文書の改竄は歴史修正への第一歩
つまりこの10年間で公文書管理は進展しているどころか衰退を通り越して犯罪の域にまで到達しているのである。
上川が言うように、公文書は国民共有の財産であって民主主義の根幹である。歴史検証は公文書の積み重ねの読み込みによって第一次的に解明されるが、この一次資料である公文書そのものが改竄されていると、歴史的事実の有が無に、無が有になる。犯罪である以上に公文書の改竄は歴史修正への第一歩なのだ。