すると、大切とは“大いに切迫していること”。丁寧は中国の打楽器で軍隊が注意を促すときに叩いたと書いてありました。大いに切迫した中で、何を大切にするか? 誰に対して丁寧を叩くか? もしかすると我々は、大切・丁寧を自分の都合に合わせて使ってしまっているのではないかと思いました。プロフェッショナルな方はきっと日々大切・丁寧と向き合っている。だから、松嶋さんが正にそうですが、縁や繋がりを非常に大切にしている方が多いように感じています。
五目並べで学んだ「俯瞰する目」
【栗岡】松嶋さんが私に連絡をくれた理由に、語源に立ち返ることを大切にしているからといっていたと記憶しています。松嶋さん自身、なぜ語源を調べるなど、モノゴトの本質を徹底的に調べるようになったんですか?
【松嶋】理由は簡単で、本質を追求するとモノゴトを俯瞰できるから。俯瞰することの重要性に気付けたのは小学校の時におじいちゃんとした五目並べかな。別に好きだからやったわけでなく、おじいちゃんに勝ったらお小遣い貰えたから(笑)。おじいちゃんは五目並べしながら、兵法を教えてくれて。攻め・守りのあり方を伝授してもらったよ。
小学生から高校生までずっとやってたね。高校生になるとお小遣いの金額が変わってくるから、下手にバイトするよりも割がいい。痴呆防止を口実に何度もお小遣いをもらいました(笑)。
お小遣い以上に、色んなスタイルを学んだ。大人になってビジネス書も沢山読んでみたけど、五目並べでモノゴトの本質を見る目、俯瞰する目を養ったかな。
【栗岡】俯瞰することで思い出したんですけど、今、AIと料理人がどのようにコラボレーションできるか研究者も巻き込んで一緒に考えてらっしゃいますよね。料理だけに集中していたらこんな企画絶対に思いつかないと思いました。
俯瞰するからこれまでにない良い組み合わせが生まれる。新結合には「俯瞰する力」が必要だと改めて考えさせられました。写真もそうですが、フォーカスしすぎると全体像が見えなくなってしまう。定期的に大きく引いて、全体像を把握すると、フォーカスしたい対象が見つかる。ただ、写真はシャッターを押せばいいですが、事業を行うためには、仲間が不可欠です。松嶋さんの周りにはいつも強力なサポーターがいます。どうすればこんなに沢山の仲間を得ることができるのですか?
【松嶋】それも五目並べで学んだ。駒が近くにいないと勝ちにくいんです。守りはできても攻めが出来なくなる。攻める方法は色々あるんだけど、布石も打たないといけないから。
幼少期に布石を打っとかないとダメだぞみたいなことを言われても意味がわからなかった。だけど、24~25歳の時に、兵法について書かれているビジネス書を読んだら全部じいさんが言ってたこと。本を読むだけではだめで、実際に体を動かして体験から学ぶことの重要性に改めて気付くことができた。