芝生に足を踏み入れる機会はあるだろうか。日本では、公園に芝生があるのに「養生中」として立入禁止にしているケースが目立つ。だが「味の素スタジアム」のヘッドグラウンドキーパーをつとめる池田省治氏は、「日本は芝生の養生期間を必要以上に長くとっている。芝生は見るものではなく使うもの」という。芝生のプロが伝える、芝生の正しい「使い方」とは――。
管理が行き届いた、味の素スタジアム(東京都調布市)の芝生(編集部撮影)

芝生は見るものではなく「使うもの」

梅雨の晴れ間に、ふと「芝生」を見る機会があると、鮮やかな緑色は見た目も心地よい。スポーツ競技場やゴルフ場、公園、庭園や屋上緑化といった場所には芝生がある。

ところで、公園などの芝生は「養生中」として長期間立ち入り禁止となっているものが目立つ。だが、本当にそれは正しいのだろうか。

「植え方や生育場所で異なりますが、根づくまで一定の保護が必要な時期はあります。でも、日本の芝生の養生の仕方はちょっとおかしい。必要以上に養生期間を長くとっているからです。そもそも芝生とは、見るものではなく使うものです」

こう断言するのは池田省治氏(オフィスショウ社長)だ。東京都調布市にある「味の素スタジアム」(味スタ)のヘッドグランドキーパーとして、プロ選手が戦う競技場の芝生管理責任者を務める。経営する会社では、味スタ以外に各地のサッカー場、ラグビー場、陸上競技場、総合運動公園などスポーツ施設を中心に39面を管理。このほか、校庭や園庭など11カ所の管理も担う。同社には、作業に当たるグラウンドクルーも26人いる(2018年3月現在)。池田氏は、日本のスポーツターフ(競技場の芝生)の第一人者だ。

味の素スタジアムのヘッドグラウンドキーパーを務める池田省治氏(編集部撮影)

後述する「鳥取方式」の技術顧問も務めており、多忙なスケジュールをやりくりして、時には小学校の校庭緑化とも向き合う。そこには芝生を愛するゆえの信条がある。