社内外問わずいろんな人に会うべきだった

【高橋】あと、僕はバンダイにいるとき、びっくりするくらい会社内しか見えていませんでした。「∞(むげん)プチプチ」という玩具を企画したときは、プチプチの会社(名古屋市に本社のある川上産業)に行きましたし、「猫背」というフィギュアを企画したときは整体師に会いに行きましたけど、それでも狭かった。あと会うのは版権元や権利元の人くらい。

でも本当は、会いたければ誰でも会えるはずで、たとえば佐渡島さんならわかってくれるかもしれない……と思ってコルクに持ち込んだら何かが起きるかもしれない。何かを突破するために、社内外問わずいろんな人に会うべきだったなあというのは、今だったら思えます。

佐渡島庸平さん

自分のアイデアがダメなのに、それに気付かない

【佐渡島】転職や起業は、今いる会社で小さい成功体験を積んでからでもいいと思います。小さい成功体験は社内でも社外でもネット上でも、いくらでも経験できるはずなので。僕自身、講談社時代に『ドラゴン桜』と『宇宙兄弟』という成功体験がありました。ただ、その成功体験があっても社内を変えられなかった。講談社の方針と僕の方針が明らかに違っていたんですね。そういうズレが明確になってから、辞めることを考えればいいと思うんですけど、実はズレていないのに、つまり単に自分のアイデアがダメなのに、周りがダメだと思い込んでいるケースは多いんですよ。

【高橋】それはかつての僕です(笑)。バンダイに入って最初の数年間くらいは全然企画が通らなくて、「玩具業界は衰退の一途だ」なんて言っているイタい奴でした。その後は会社で得られることを吸収し尽くすというか、やり尽くすまではいたんですけど、今度は会社を辞めたあと成長するのが一番難しかったですね。会社にいるときは、「このままだと自分の成長速度は遅くなるかもしれない」と思ったから辞めたんですけど。

【佐渡島】会社員の多くは40歳くらいで成長のスピードがゆるやかになっていきますからね。それまで輝いていた人が全員は輝けなくなっていく、という側面はあると思いますよ。

【高橋】とにかく、会社にいるうちにあれこれと作戦をたててみるのはおもしろいと思いますね。僕は「最弱のビジネスパーソン」を名乗っていて、気も弱ければ体も弱い。そして怖い人が一番苦手。だけど、あまりに企画が通らなくて半年くらい1個も商品を作ってない時期に、同期はものすごく売り上げを立てていることがありました。そういう崖っぷちのときに、「何でもいいからやってやろう」と覚悟すれば何かは変わりますし、僕はそれでうまくいきました。

いくら会社に理解がないとか言っても、探せば味方はいるはずなんですよ。それに、そもそも社内にすら味方がいないなら、その企画は世に出してもダメだってことだと思います。