口座残高を「211万円」から「2935万円」に改竄

田中さんはほかのオーナーと連絡をとるなかで、融資書類の改竄の疑いを強めていった。弁護士を通じて、仲介業者に融資書類の提出を求めたところ、銀行通帳の画像データが送られてきた。提出した画像データには「211万円」という残高が記載されているはずだが、送られてきた画像データの口座残高は「2935万円」で、そこから「1060万円」を支払っていることになっていた。いずれも田中さんには身の覚えのない入出金だという。

「身に覚えのない金額が書かれており、本当に驚きました。物件の購入にあたり、販売会社からは『頭金は一切不要です』と説明を受けていました。ところが、送られてきた通帳の画像データには1060万円の支払いをした形跡があるのです。あとで弁護士からは『本来、1億円程度の物件を購入するには、1000万円以上の頭金が必要です』と聞きました。私には購入物件の頭金を支払えるような貯蓄はなく、通常の融資審査が行われていれば、融資は下りなかったはずです」(田中さん)

「原本」での残高は514万円になっているが……

どういうことなのか。田中さんの銀行通帳の画像データをみてみよう。

現在も田中さんの手元にある「原本」では、3ページ目の最初に「繰越残高 514万円」とあり、5ページ目の最後は「11月2日 2183円 ガス料」の引き落としとなっている。口座残高は211万円だ。

(上)「原本」の3ページ目。(下)「原本」の5ページ目。