「何を話すか」から考え始めるから、 プレゼンテーションがうまく行かない
みなさんはプレゼンテーションの準備を始めるときに、まず何から考えるでしょうか。多くの人は、「今度のプレゼンでは何を話そうか」ということから考え始めると思います。実はそこに落とし穴があります。
「何を話そうか」から考えると、自分自身が話したいことが頭の中に浮かんできます。けれども「自分が話したいこと=相手が聞きたいこと」ではありません。
例えばあなたがエンジニアだとして、「エンジニアとして新製品を開発することの苦労と喜び」についてプレゼンテーションをする機会があったとします。ただしプレゼンテーションをする相手が同業者なのか、経営者層なのか、あるいは学生なのかによって、相手が興味を持つ話題はまったく違ってきます。同業者には専門性の高い話が求められるでしょうが、学生相手に同じ話をしても相手はちんぷんかんぷんでしょう。
ですからプレゼンテーションの際にまず考えなくてはいけないのは、「今度のプレゼンでは、何を話そうか」ではなく、「今度のプレゼンテーションでは、誰に話すのか」ということです。そして「誰に話すのか」というイメージを明確にしたら、「ではその人に向けて、何をどのように話すのか」という順番になります。
「聴衆分析マトリクス」で、話す相手をイメージングする
「誰に話すのか」を考えるときに役立つのが、「聴衆分析マトリクス」です。
このマトリクスでは聴衆を「話すテーマについての知識が多いか少ないか」「興味が高いか低いか」の2軸によって4つの象限に分けます(図1参照)。
このうち最も話しやすいのがAゾーンに属する人たちです。知識も豊富で、ニーズも高い。ですからあなたが持っている知識を思う存分話せば、相手はそれだけで食いついてきてくれます。
一方Bゾーンの聴衆は、ニーズは高いものの知識量はそれほどではない人たちです。こういう相手に対しては、例えば新製品についてのプレゼンテーションする場合であれば、その新製品を導入すると「要はどんなメリットがあるか」「これまでの製品と何が違うのか」といったポイントを簡潔に提示します。スペック等についての細かい知識については、必要最低限の説明に抑えます。
では知識もなければ興味もないCゾーンの聴衆に対してはどうすればいいか。この場合、まずは聴衆をBゾーンに引き上げていくことを目指します。「あなたの職場の中にこの製品が入ると、毎日の仕事がこんなふうに変わりますよ」というシーンを具体的に描いて示すことで、「何か自分にも関係ありそうな話だな」と思わせるのです。
さて4つのタイプの中でも一番厄介なのが、Dゾーンの聴衆です。彼らは「ああ、その話ね。よく知っているけど、自分には関係ないよ」と思い込んでいます。生半可に知識があるから、聞く耳持たずになっているわけです。