30年前の新宿で味わった「インタビュー」の醍醐味

<strong>足立倫行</strong>●あだち・のりゆき 1948年、鳥取県境港市生まれ。早稲田大学政経学部中退。週刊誌記者を経てフリーに。著書に『日本海のイカ』『妖怪と歩く 評伝・水木しげる』など。
足立倫行●あだち・のりゆき 1948年、鳥取県境港市生まれ。早稲田大学政経学部中退。週刊誌記者を経てフリーに。著書に『日本海のイカ』『妖怪と歩く 評伝・水木しげる』など。

今から約30年前、夜更けの新宿で取材したある若者のことを、足立倫行さんは今もよく覚えている。

当時、「平凡パンチ」の記者だった20代の彼は、“眠らない街・新宿”をテーマとしたルポを準備していた。その取材で新宿中央公園を訪れたとき――。

「街のボウリング場で働いているという男女に会ったんです。聞けば男性のほうは東北出身で、上京後の苦労や楽しさを、書ききれないほど語ってくれた」

取材の礼をすると、こう言われた。東京にきてから寂しかったけれど、自分の話を聞いてもらえて嬉しかった。こちらこそありがとう……。

「そのとき、僕には得意なことは何もないけれど、こうやって誰かの話を聞くことはできるかもしれない、と思ったんです」

ときに何かを誰かに語りたい、自らの物語を知ってもらいたい、という人間の欲求に触れた瞬間。それは後に『北里大学病院24時』など数々のノンフィクション作品を生み出す、足立さんの出発点となるシーンだった。

本書はその彼が「インタビュー」にとことんこだわった一冊。

「この時代の中で重要な言葉を持つ人たち」――保阪正康、内田樹、佐藤優、森達也、島田裕巳、田中森一、溝口敦、重松清の8人を、「プレイボーイ日本版」に掲載した中から選んだ。

「インタビューのみで人物の全体像を描く場合、彼らの言葉がすべて。相手の奥深くにあるものを探り、なぜ彼らはそう書き、語るのかという核の部分を明らかにする姿勢が必要でした」

『悪党の金言』 足立倫行著 集英社新書 本体価格760円+税

足立さんは妻や子供、両親、生い立ちなどについても意識的に注目し、質問を投げかける。

(公文健太郎=撮影)

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