業績が好調なのは、社長に先見の明があるから。では、そんな敏腕の社長は、どんな分野にお金を投じようと考えているのか。誰もが気になることを直撃取材する。

世界を旅して世の中の動きを俯瞰する力を養った

私は高校卒業後の1973~76年、旧西独のマインツ大学に留学しました。そして大学に通うかたわら、日本からの観光客や出張者に夜のドイツを楽しんでもらう「ナイトツアー」を企画して、学費や滞在費を稼いでいたのです。

エイチ・アイ・エス代表取締役会長兼社長 澤田秀雄氏

実は当時、世界的な石油ショックで株価が暴落していました。そこで経済学を学んでいた私は、勉強も兼ねて独フォルクスワーゲンや日本の日立製作所などの株を、ナイトツアーで貯めたお金で買いました。「どれも国を代表する大企業だから、いずれ株価も持ち直すだろう」と考えたからです。実際に半年から1年で購入した株はすべて値上がりし、お金は倍増しました。その数千万円の資金を元手に帰国後の80年、格安航空券の販売会社「インターナショナルツアーズ」を設立。それが現在のエイチ・アイ・エスです。

留学時代に初めて株を買って以来、長年にわたる株式投資の経験で得た私の持論の1つが、「株価は経済の先行指標」です。おおよそ3~9カ月先の経済が見通せます。先行き景気が悪くなるときや、企業収益が悪化するときは株価は下がり、逆に経済見通しが明るいときや、企業収益が増える見込みだと株価は上がります。

いま、米国ではNYダウ平均株価が2万4000ドルを突破し、過去最高値を記録しており、「たぶん2018年上半期の米国経済は明るいのでは」と予想できます。日経平均株価も約25年ぶりに2万3000円台を回復し、これからも好調が続き、18年は3万円台に乗るとの予測も出ています。それが実現するかどうかはわかりませんが、足元の日本企業の業績は好調で、「国内景気も株価も、19年上半期はいいのではないか」と私は見ています。

ただし、いまの株高の背景には世界的な金余りがあるのも確かで、米国や欧州では金融引き締めに動き出していることから、1年、2年先の経済情勢や株価は不透明です。

日本企業の業績が好調な半面、企業の内部留保が注目されています。「お金は天下の回りもの」というように、お金は滞留することなく、循環するほうが望ましいのです。企業は利益を新たな事業や設備投資に回すことで、その企業の成長期待が高まり、株価が上がり時価総額も増える。そして事業がうまくいけば利益が生まれ、再投資したり、従業員や株主に還元する。そうした好循環が何よりも大切なのです。

では、有望な投資先をどのように見つければよいのでしょうか。それには世界の動きをよく見ることです。そこに成長産業、有望な市場の芽があるからです。私はドイツ留学以来、世界各国を旅するなかで、世の中の動きを俯瞰して見る目を養ってきました。

世界を見渡す際に、特に重要なのが欧米エリアです。欧米発のビジネスの多くが数年後に日本に入ってきて、やがてアジア諸国などにも広がっていくからです。古くはスーパーマーケット、コンビニエンスストア、最近ではネット通販サイトなどがそれに当たります。旅行業界でも、FIT(海外個人旅行)やOTA(オンライン旅行代理店)など新たな潮流が生まれています。私もそうした動きをいち早くキャッチして、素早く対応してきました。