その理由は、予約をした時点でアリペイで全額決済してしまう、つまりお金を先に払ってしまうから、ということが1つ。もう1つの理由が、みな「芝麻信用における信用格付けを落としたくない」と考えているからです。
面白い逸話としては、適齢期の女性が集まって合コンをする時、クレジットスコアが800以上の男性しか参加する資格がないなどと篩(ふるい)にかけている、という事例も伝わってきています。特にクレジットスコアの高い人は、自分の現在の信用度を落とすまいと、必死になって約束を守るように頑張っているのです。
日本に銀行は“1つ”あれば十分
アリババのすごさをもう1つ挙げるとするならば、それはAI技術を使った「融資」のシステムです。アリババ傘下のアント・フィナンシャル社が、ビジネスでお金を必要としている人に銀行のようにお金を貸すサービス「網商貸」を行っており、このシステムの処理スピードが驚異的なのです。
スマホのアプリから融資申請を提出すると、コンピュータが瞬時に融資判断を下して数分で送金されるという仕組みで、この超高速融資システムは「3・1・0」と呼ばれています。融資申請の記入に必要な時間がスマホで約「3分」。融資の可否を判断する時間が「1秒」。AIが審査をするので、審査を行う人間は「0人」という意味です。こんなことが可能なのは、ビッグデータの蓄積・解析によって「この人にはいくらお金を貸しても大丈夫」という判断が瞬時にできるからです。
これは日本の銀行では逆立ちしてもできないことです。そんなシステムを導入したら、銀行員のほとんどは要らなくなってしまうからです。日本の銀行は今後数万人規模の人員削減をすると言っていますが、私に言わせれば、1年後にほぼ全員クビになっても問題なく回ると思います。今や銀行は日本中に1つだけあれば十分、行員も数人で十分、ということになります。
金融庁は銀行を合併させて何とか生きながらえさせようとしているようですが、今のままではとても生き残ることはできないでしょう。同じものを合併して何とか規模の経済(大きすぎて潰せない)が効いたのは20世紀までだ、ということが分かっていないのです。当事者と当局にそうした危機感、認識がないのが悲しいところです。