朝日社説は北朝鮮を甘くみていないか

ただしこの次が朝日社説のおもしろいところである。いやおもしろいというより、弱いところだろう。

「その背景を踏まえつつ、南北間での高位の対話が実現することは評価したい。むしろ、不毛な緊張状態を改善する意義を悟らせ、正恩氏に直接メッセージを届ける好機ととらえたい」

本当に「南北間での高位の対話が実現」となるのだろうか。北朝鮮側は「不毛な緊張状態を改善する意義」があると捉えるのだろうか。朝日社説は北朝鮮を甘くみていないか。沙鴎一歩は大いに疑問である。

北朝鮮はそんなに甘くはない。間違いなく、かなりしたたかである。

朝日が書くことはどこまでも理想論

朝日社説はこうも書く。

「非核化を選べば政治・経済の両面で見返りの利益がもたらされる道筋があることを確認すべきだろう」
「今回の南北対話を、米朝交渉の実現につなげることが肝要だ」
「文政権は、日米両政府との緊密な意思疎通をしたうえで、与正氏らとの会談に臨んでもらいたい」

その通りなのではあるが、北朝鮮は朝日の理想論のようには動かない。いまはむしろ韓国側が北朝鮮以上にしたたかになるよう求めるべきである。

自国の利益を最優先に考えてどこまでしたたかに行動できるか。それが国際社会で生き残る術であり、外交の本道だからだ。

最後に朝日社説は安倍政権に「歓迎行事の際などでも接触を図り、核・ミサイル問題とともに、二国間の懸案を直接訴えるべきだ」と注文しているが、安倍晋三首相にそこまでの力はあるのだろうか。

実現すればたいしたものだが、これも朝日の理想論だ。

東京は「思慮に欠ける行動」と批判

次に東京新聞の社説を読んでいこう。

第1社説で「平昌五輪開幕」というテーマを付け、「汚れなき舞台であれ」(見出し)と今回の冬季オリンピック全般にわたって主張し、第2社説で問題の軍事パレードを取り上げて「不信の増幅もうやめよ」(見出し)と批判する。

そのリードはこうである。

「北朝鮮は平昌冬季五輪開幕の前日というタイミングで、軍事パレードを強行した。五輪を舞台として、せっかく生まれた南北の和解ムードを乱す、思慮に欠ける行動と言わざるを得ない」

ストレートで分かりやすい主張だ。それだけ北朝鮮のこの時期の軍事パレードが異常だからだろう。

本文の書き出しもまっすぐだ。

「軍事パレードは昨年四月にも行われた。新型のミサイルが続々と登場し、敵対する米国への対抗心をむき出しにした」
「パレードに出てきたのと同じ型とみられるミサイルが、その後実際に発射され、国際社会から厳しい批判を浴びた」